第23章 突然ですが、さようなら
術式によって破壊された肉体が治っていく。元にあった位置へと収まってるのか、制服の下でなにかが蠢いて。もしくは失ったものが再生をしている。
肩に押さえつけるようにしっかりと触れていた憂太が、ハルカから手を離す。安堵した表情の憂太は肩の力を抜いた。
「──ふーっ…とりあえず、体は治しましたけど…」
「……うん、お疲れ様…ありがと。やっぱりそう簡単にはいかないってのは知ってたさ、」
現状維持をしていた術式は解けて、憂太の治療でハルカは身体は完全に通常の状態になった。服はボロボロでも肉体は健康そのもののハズだ。けれども僕が彼女の顎に触れると、脈も呼吸も全く無くて。
これも想定内だ。可能な限り僕の体力が続く限り諦めるつもりはないからね。憂太には少し待って貰ってて今からは僕がしっかりと頑張っていかないと!蘇生は時間との勝負だ、あとは彼女の奇跡が起こる事を願うしか無い。
「じゃあ、今から僕、ハルカをひたすら心肺蘇生を繰り返してくから」
「……はい??」
驚いた表情の憂太。自信満々に僕は笑った。実際に諦めるつもりはないから、チャレンジしてみる事にまず意味があるんじゃないかって。それが奇跡に繋がるはずだ。
昔、心肺蘇生の講習を受けた事を思い出す。人形相手で実際の人間を相手した経験はないけれど。誰よりもハルカを生かしたいという気持ちは負けない。
「心臓マッサージだからね、結構力居るんだ。そうそう折れることは無いと思うけれど僕が繰り返し何度も圧迫を繰り返せばせっかく治した骨も折れるかもしれない。そしたらその骨が内臓を傷付ける事もあるだろうね。
僕はハルカが自力で生命維持活動が出来るまで諦めるつもりはないから、もしもがあれば憂太はハルカの中の骨が折れたり、それが刺さったりした怪我を治して欲しいんだ。それから野次馬が来たら医療関係の呪術師以外は近付かせないようにして」
「あの、五条せんせ」
「30分とか生ぬるくないよー?言っておくけど。僕が倒れるまで、ハルカにずーっと心肺蘇生を繰り返すから。僕はこう見えても独占欲の高い男だからね、まだ神様にはこの子を差し出すつもりはないの」