• テキストサイズ

【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第23章 突然ですが、さようなら


……首から上は綺麗だ。もしも潰れていたならば僕でも今以上のショックは隠せない。
顔とか頭じゃない、という事は……と葵が途中で止めていたシートを掴み、固唾を呑んで。覚悟を以ってゆっくりと捲っていく。僕の心臓がうるさくて手もガタガタと震えた。

僕がカスタムした高専の制服。膨らむ胸元に、ふたつの丸い肌色が見える。何かが貫通して制服に赤が付いてる(黒っぽくなって)るけど、穴が空いたであろう体には何もなかったような素肌が晒されてる。

「……これ、治した跡だねえ…、」
「胸部と腹、胸ん所だけは治せたんだろう。それともこっちだけ先に受けて、腹に追撃を受けたか、だ」

葵のネタバレを聞き、その肌色をじっと見る。その素肌の見える位置とは心臓の位置だ。ど真ん中に攻撃を受けても彼女は自力で治したんだ。ハルカ…生きようと頑張っていたんだ……。心臓の隣の素肌は肺、こっちも……。

目を開けずに胸が上下しない彼女。今は術式によって彼女の時が停められている。これ以上の症状は悪くならない、つまりは腐敗も進まない。今は治療のために手出しをしたら悪化する。
そっとシートを一気に捲った。バサァ…、空気を受けふわりと浮いたシートは僕の手から離れて少し離れた駅構内の床に落ちる。

──ハルカの腹部からは血が滲み出てた。

脈打つ心臓が動かないから大量出血をしてないだけで、明らかにそこは致命傷を受けたのだと理解した。
そっと片手で触れる。べとつく血がまだ少しだけ生ぬるく、インナーで見えない下にぐずぐずになった感触があった。インナーがなければ中身が溢れるレベルでの衝撃を受けたのでは?

上からただ、触れるだけ。ぺたぺたと制服から触れればだいたい下腹部から胸部付近まで随分と柔らかくなってる。ヤケに尖った感触はきっと骨が折れてる。胸骨もいくつかやられてるのは後からの攻撃を受けてか。肺の下くらいまではやられてるのかな……。

血に濡れていないもう片手でハルカの頬に触れた。死んですぐに保存されたって言ってたからね、まだ頬も僅かな熱を残してる。本当に寝てるんだって思いたくて顎下に指を当てみたらそんな希望なんて打ち砕かれて。
……呼吸も、脈も…生命活動が全くなくってさ。
/ 2273ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp