第23章 突然ですが、さようなら
219.
この仮拠点へと辿り着く前からどくどくと嫌な警告みたいな、嫌な胸の高鳴りを感じてた。
頼むから無事で居て。珍しい冗談であって欲しいって。そう願うように必死で駆け込んだ先、いくつもの椅子に座ってる高専関係者達。それは触れただけで怪我を吸い取ってしまう彼女が居るにしてはありえない光景で、これは治療が行き届いてないって事で。怪我をした高専関係のヤツらは互いに簡易的な手当てをし合ってた。
「はぁー…はぁー…、」
そんなに走ってないのにものすごい疲労感。いや、緊張故か。
見渡せばここを離れる前とは違う点がすぐに見つかった。床にはブルーシートを掛けられたふたり分の膨らみ。そのすぐ近くに立つのは京都校一年の新、ハルカのクラスメイトと葵。葵は怪我をしてるのか、手当の痕があった。
……僕が任務中に葵が現場から抜けたって察知した頃にはもう…、って事なんだろうか?
結構前の状態なんじゃ……。
立ち止まる足。進める僕の足はそれ以上行くなって言ってるみたいで、側で力が抜けたみたいに勢いよくしゃがみ、そっとシートへと震える手を伸ばした。新や葵の側に憂太も立って、乱れていた呼吸を整えようと気付けば僕は胸に手を当てていた。
「そっちは補助監督生の遺体だ」
葵の忠告。僕はまだ隣のハルカの現実を受け入れたくない、術式で彼女の状態が今以上に酷くならないのなら……と、止めた手を再び伸ばしてシートを捲る。
何があったのか、苦悶の表情と顎が外れて口の端を切り、血が溢れた後の形跡のある男……補助監督生の遺体。悲惨な最期を遂げたみたいだな……。
「……これは?」
ふう、と息を吐いた葵もしゃがんだ。
「おそらくは補助監督生が先に呪霊によって襲われ、殺された。その後にその遺体に呪霊が潜り込んでここまでやってきた。受肉体のように、非術師でも見える状態だな、死体を着て、だ。
実際に怪我をしたこいつがここに歩いて向かってるのを新田が目撃してる。ハルカが治療しようとした所をだまし討ちで……って所だろうな…」
「……」