第23章 突然ですが、さようなら
"ハルカ……、五条ハルカが死んだ"
時が止まったような気がした。随分と笑えない冗談みたいで、ただ聴き間違えなんじゃないかって思いたかった。
「……は?…なに?僕の聞き間違いかな?今、なんつった?」
駅に向かってた足が止まる。非術師達が騒がしく、すっごく楽しそうに笑ってて秋の京都に浮かれてるのが今はとても耳障りだ。
うじゃうじゃいる観光客のもっともっと先には駅がある。またも黙ってる葵に僕はもう一度、聞き直した。
「僕にはハルカが死んだっていう、冗談にもならない事が聞こえたんだけど?今日はエイプリルフールじゃないんだけどな?」
「……えっ?」
"だから冷静に聞いてくれ。ハルカが死んだ、詳細は省くが死んで間もない状態を一年の術式でとりあえずの保護はしている"
一年の術式、というと新田新の呪術を掛けてるって事か。
死にたて、だとかそれも冗談に聴こえない。何があったのかきちんと聞いて状況を整理しないと……ハルカ、ハルカが死んだなんてそんな事ありえない。以前よりもちゃんと行動の出来る子だし、立ち向かうよりも命を大事にする子だし…死んだ、とか…冗談でも言うなよ……。
駅方面を見ていた視線を憂太に向ける。目を少し泳がせて、憂太は駅を指差した。
「……急ぎましょう、ただ事じゃないんですよね?ハルカさんが死んだって僕も聞こえましたけど…っ!」
「…そうだ、憂太……、憂太が居る…、まだ、ハルカが助かるかもしれない……」
誰に向けた言葉でもない。僕の心で思った言葉が自然と漏れ出していて、それは憂太にも、通話中のままの葵にも伝わっていて。
"あくまでも希望だ、なるべく早くで頼む。完全に間に合わなくなる前に"
「分かった!切るよ!……憂太、ダッシュ!駅まで急ぐ!」
「はいっ!」
共に駆け出す僕ら。早く大好きなキミの元に辿り着く為に足を動かしてる。