第23章 突然ですが、さようなら
それからさ。以前に結婚式の話が出た時も『家のごたごたとか気にしとる場合かっ!』って悟に詰め寄って結婚式でも挙げときゃ良かったかなあ……、写真とかも撮ってさ。ああ、式が色んな準備が必要であるなら前撮りだけでも良かったのかも…そうしておけば寂しんぼな悟は少しでも安心出来る。
子供についても卒業とか言わずに、悟の前からの希望通り、薬も飲まず避妊もしないで赤ちゃんでも作っておけば、今回みたいな任務さえも話が私に来なくて生きられたのかな。保身じゃなくて、確かに生きてた証が残るから。私がこうして急に死んでも悟の側にずっと居てあげられる子が出来たなら……。
もう、悟に何も残してあげられてないじゃん……私。あんなに何度も欲しがっていたのにそれを私は拒否し続けたからこんな事になってる。
どうしてこんな事になったんだろ……。
かつての後悔は再び、大きな山のようにそびえ立つ。今度という今度こそは駄目だ、不幸を塗り替える幸運なんて見つかりっこない。
それでもこの袋小路から更に切り離されたような領域の中、ずっとずっと絶望し続けるのはしたくない。時間なんて無いようなものだけれどどこか、絶望と後悔の心の奥底に希望が一握りだけ残ってる。
根拠がなくても想うだけなら。諦めきりたくない、例え死んでいても希望にすがっていても良いでしょ?
幽霊にでもなって枕元に現れるくらいは出来るかも、だし。想い続けてそんな存在になったら、悟の枕元でありがとうとさよならの言葉が言えたなら。愛という呪いがあるのなら、それくらいは出来るのだと希望をもって幸運は無くとも希望を作った。
……呪う事は春日の一族だからお得意、簡単な事なんでしょ?とっても強い呪いが代を継いで続いてるなら、と私も今回をの呪いを利用するよう、自分を呪うように意気込む。
少しだけ、この時間の進まないこの夕日に。今日とは違う変わりのある明日があるのだと信じて。