第3章 呪術を使いこなす事
学生とはいえ、危険な現場に行くからこそ今は居候から見習いみたいなものになっているのだけれど。
今日になって呪術の感覚をこれだ!としっかりと意識が出来るようになったのは進歩だ。
痛い傷を受けたくないし、呪いも怖い。見える側になった私はそれでも、非術者時代のありきたりな能力でだらだらと働くよりかは春日の力を発揮して働いたほうが誰かの役に立てるのではないか?と考えてきている。
事務とか生産業とかレジ・品出しよりは体、張るからお給料も良さそうだし……ね。結構良い給料って具体的な金額は知らないけれど。
悟はしゃがみ私の頭に手を乗せた。
「とっくに掛け合い済みだ。でもそこはハルカが好きに選べば良いんだけれど…」
伊地知の怪我の状態を見るためにと捲くっていたズボンの裾を、しゃがんで直していた私は、頭上の手をむんずと掴んでリリースし、投げかけられた言葉に顔を上げた。
『専門学校という事だから、入らないといけないんでしょ。なれたら…かなー』
「他人を治療出来るのならば必要ですよ、家入さん忙しいですし。あの、治療ありがとうございます…」
とにこやかに笑う伊地知。私はそのまま立ち上がると悟が肩に手を乗せた。
すかさずまた払うと、凝りずにまたまた載せる。しつこいなぁ、と思いながら諦めた。どうせまた乗っけられる。
「面談もハルカなら大丈夫でしょー、治療要員は喉から手が出るほど欲しいもんねぇ。でもその前に溜め込んだ呪いを吐き出すのが先。反転術式をマスターしなきゃ!
ほら、例によっていつもん所!ほらほら、ハルカ。体育のお時間ですよー!」
可愛いコアラは今じゃ黒っぽいクマになって替えられた。悟は気をつけなよ?と言っていた、今までよりも難易度が上がっているからだと。勿論呪術の感覚が身についていない私にとっては治療中は手放していたんだけれど。
肩に手、そしてもう片手にツカモトが持たれている。それを私の前に出されて私はそれを受け取った。
『こいつ、気を抜くと殴ってくるからなぁ~…』
治療をした、という事で片手で家入が手渡す紙をデスクに置き、家入と共に治療を行った、という連名形式として、家入硝子の隣に記入する。
ペンをペン立ての方に入れていると、腕の中のツカモトが揺れる。悟の手、撫でたみたいだ。