第23章 突然ですが、さようなら
じりじりと彼の方から私へ距離を詰めていけば彼の口元は痛みで表情が歪む事無く怪しく笑みを浮かべてた。
その口から少し赤黒い血が、つう…と溢れる。顎から床にそれが落ちる。痛そうなのに痛そうに押さえてるようには見えない、まるで"痛がるポース"をしたみたいな、それを止めたみたいに肩から手を離す男。やっぱりなにか様子がおかしい、少しでも距離を取ろうと、通路の真ん中の丸い支柱を挟むように彼との間に障害物を入れた。
「な、なん……何でにっ…ニゲるんデスカ…?」
発音もなんか変だし。これ、ヤバイやつじゃね?
そう判断して戦うべきかと判断するも、まずは報連相。仮拠点に正体不明の人物?に襲撃されてるという連絡をしたい所なんだけど。
……しまった、その連絡係というか、護衛でもある新田が今東堂を案内する為に離れてるんだった!少しの間だとは思うけど、これは私自身がやるか、それとも時間を稼いで合流、のちに東堂への回復で彼に相手してもらうか。
この人は呪詛師というよりも呪霊…受肉体。その辺りだとは思う(なんか様子が微妙で判断しにくい)弱そうには見えなくてきっと強いやつだ。
障害物が欲しい、と言った所で机とかじゃ意味ないし。後退りする中で目に入ったのは駅構内に点在する大きな支柱。これでぐるぐると方向転換しつつ距離を稼ごう。
……ちびくろサンボみたいにエンドレスぐるぐるのちバターになるような事はしたくないなあ。ちゃんと回ってくれるかな…。
『……治療、どころじゃないですよね、それ……本来なら移動も困難のはず…。しかも言葉がなんだか変だし』
「アア、カンが良いノカナ、それトモ警戒されルくらいに不審だったのカなあ……」