第23章 突然ですが、さようなら
「なんか東堂先輩が怪我したってんで、こっちに誘導しに行ってきやす!」
『あの先輩、怪我するんだね…人間だったんだ……』
「……五条さんみたいな事言ってますね」
おっと、と口を押さえ、悟みたいな事言ってたな、と反省しつつ。
だって強そうじゃない、怪我知らずって印象が強いんだよ。一級呪術師でもある、なら仮拠点に怪我の治療目的で来なくない?
苦笑いのち新田は通路の先を指差した。
「じゃあ、すぐ連れて来るんでここで待機、宜しく頼んます……って言っても今は負傷者、誰も居ないけどさ!」
『平和って事よ、じゃあ帰ってくるのゆっくりと待ってるよー』
ひらひらと軽く手を振って。走っていく新田の背を見送って。
その彼とすれ違いで肩を押さえたスーツの男。補助監督生がやって来て。
簡易的な結界を抜けた瞬間、結界が赤いオーロラの様に一瞬光る。
「治療、お願いシます」
『あ…、』
ぞくっ、とした違和感。今、なんで結界が反応した……?結界といってもどういう反応するかは聞いてなかった、迎撃するとかバリア的な効果があるとか。もしかしたら今のが警告…?でも、補助監督生なんだよね、この人……。
虚ろな瞳の補助監督生は左右に揺れながらもここに辿り着いたのは良いけれど、明らかに重傷だった。足首があらぬ方向を向いてよたよた歩いてるのに、痛がる素振りはなく。付添もいない、単独でやってきた。呪いを受けてしまったのかな、ならそれで結界が反応する可能性もある……けど。
胸がざわつく。本能というか、警鐘を鳴らしてる。危ないって。だから重傷者というよりも様子見をした方が良いと判断した。
だって、この人…。この、補助監督生……のような人。なにか様子がおかしいもの。
『あのー…?』