第23章 突然ですが、さようなら
背後でがた、かちゃ…、と何か弄ってる音がする。暴れてももう意味がないから、視線が確実に背後に向いてる悟を見上げるとにこにこした悟が私へ視線を移した。
「甘い香りする。炭作ってたってワケじゃないでしょ?」
『まあ……ウン。悟にお菓子でも作ってみるのも…って』
「えっ、僕の為に炭、じゃなかったお菓子作ってたの?」
おいソレ本音ー!と失敗からの恥ずかしさとデリカシーの無い炭と言ってのけた悟を若干睨みつつ。
『ここは炭治郎の実家じゃねえよ?……はあ、だから失敗したから処分する前に悟が帰ってきちゃったの!なんでこういう時に限って遅く来ないのかなー!』
「えー?だって早くオマエに会いたかったんだもんっ」
ふい、とご機嫌な悟から視線を反らして東京と同じ位置にある冷蔵庫を見る。失敗した事、小馬鹿にしてんだから…!
ブラウニーの予定が焼きチョコになったダークマターに足を突っ込んだもの。焦げすぎて食べられない部分も一部ある。けれどもほとんどは食べられる。全部捨てるのはもったいないから悟が居ない時に食べよう。それくらいまで考えた所でふと甘い香りが急に強くなった。
はっ、と見上げたらもぐもぐと口を動かしてる悟。
「……んー、失敗って言ってるけど。僕にとっては美味しいって感じるなあ」
そういってまたひとつまみ、既にトレイ上で焼き加減の確認も兼ねて切り分けられたブラウニーを手に取って口に運んでる彼。馬鹿にしてるわけじゃなく、「うまっ」と美味しそうに食べてる……。
『なに、そんなに食べてんの……もう。次回ちゃんと作れた時に食べるならまだしも、ブラウニーの失敗作だよ…?』
「アッ…焼きチョコベイク的なモノかと……」