第23章 突然ですが、さようなら
意地悪そうな笑みの悟に首を横に振って、私から時折、キッチン内をきょろきょろと視線を向けてる悟に言わねえぞ?と黙秘は続ける。
そろ…っ、とゆっくりと動きながらオーブンに気が向かないように移動をして…。背にすれば見えないかなって。
でもそれが逆に主張してしまったらしい、そりゃあオーブンに違和感あるブランケット掛けてしまいましたし……。
「ん?……あっれれー?ハルカの後ろがなんだかおっかしいぞー?アハ現象で僕の脳が超活性してんだけどー?」
『なんにも無いっ!何もないったら!』
私の背後を明らかに見てる視線。隠したい所を目ざとく見付けた悟は私の前に立った。
両手を構えてる。私は手を広げて後ろに来ないようにディフェンスした。
「うぇい!うぇい!……うぇい!」
『くっ…!小学生かっ!このっ!やめろ!』
フェイントで手を後ろに出しかけては引っ込める。水を得た魚のように今週一の笑顔では?というくらいにはしゃいでる悟。まったく…小学生のいたずらみたいな事をして…!ガキ大将めっ!
『後でっ!処分するからっ!』
「見してー持たせて触らせてー!指紋付けさせてー!ついでに食べてみたーい!ハルカも食べたーい!」
『駄目、無理、見ることも許されない。こちら、私の方で収容させていただきます』
「えっ、なにキミSCPでも作ってたの??クラスKETELだったらヤバイよ、僕が代わりに収容しとくから逆に気になっちゃうなー!」
キッ!と悟を見上げると、ただ黙って私を見てる。なんかろくなこと考えてないだろうな、と思いつつ。
にやりと笑った瞬間には時、既に遅く。
「……隙ありっ!」
『わっ!?』
左腕が私の背に回されて悟の胸に引き寄せられて、その抱き寄せた悟の視線は私よりも背後へ。その爛々とした目元は生きの良い獲物を追ってるハンターの如し。
ガタン、とオーブンのドアが開けられた音。ぎゅむっ、と厚い胸板と筋肉質な腕のコンボはそう簡単に抜けられる事もなく。可能な限り暴れるもびくともしないし!
『み、見るなー!』
「おー…チョコかなんか?ちょっとダークマターになりきれてないチョコなんじゃない?ちょっと香ばしい匂いするけど」