第23章 突然ですが、さようなら
ガタガタ、ガチャ、という音が寮のドアの方向から聞こえてくるんですけど。勝手に合鍵を作ってる悟が部屋の鍵を開けた音だ。これには焦る、ちょっと汗をかきながら任務とかホームルームの時みたいに遅れて来いよ!とさえ思えた。
まずい、と全開の窓にバサバサとブランケットで空気を外に押し出す。ちょっと今の私の鼻は馬鹿になってるからなあ、多分最初よりはマシか、マシだよね、ウン…マシだと思っておこう、仕方ない!と窓を締めて、速歩きでキッチンへと向かう。
怪しまれないように換気扇を消さないと……!
ガチャ、という音とガサガサ音。何かビニール袋を下げてきただろう悟が、ふー、と入って早々ため息をついていた。お疲れモード全開だわ。
「ただいまー…、ハルカ~、居るんでしょ?GLGなダーリンにおかえりなさいのチュウはー?」
やばいやばい、悟が来る!少しうろたえながらオーブンにさっき扇いで抱えたままだったブランケットをかぶせて窓が見えないように隠して。火事にならないよね…大丈夫だよね…?
このまま様子見を続けるのもリスクがある、彼に怪しまれちゃう…!これで良いって事にして私は小走りで玄関方面へと向かった。
『……ん、おかえりー』
「うんっ!ただいまー!」
まだ玄関から数歩、進んだ所で止まってた足。
学校でよく見る、上下黒の服にアイマスク。片手を挙げた悟はその手を私の肩に、もう片手を背に回す。買い物した袋が背後でガサ、と鳴った。
口元は緩んでいる。そりゃあそうだ、明日は京都で任務…早く帰る必要ないし。つまりはゆっくり出来るってわけで。
「僕に会えなくて枕を濡らしてた?寂しかったねー、でも大丈夫っ!寂しんぼのハルカの元に~?五条悟が~……くーるーぅ!」
『……ザキヤマか?』
「はーい、ただいまっ」
唇が押し付けられるキスをした後に肩に乗せた手が降りて、目の前にガサッ!とご機嫌な口元をしてビニール袋を私へと突き出す悟。
「シュークリーム買ってきたよー!ヨーグルト味だって!甘いけどさっぱりしてて人気なんだって~」
『おー、お土産ありがと!』