第23章 突然ですが、さようなら
「そう聞いてしまえばただの治療員ではないと更に重宝するな……東京には治療に長けた呪術師が多くて羨ましい限りだよ。出張とは言わずこっちにずっと居れば一番良いんだがな……。
治癒だけでなく他の呪術も扱える……、元は禪院家からの派生、流石に春日家と言った所か」
加茂家の視点からの評価に少しだけ認めてもらえた気がしてちょっと嬉しいけど。
『どうも。でももう私しか継承者が居ないからあちこちから狙われる身ですよ……だからこっちにずっと居るのはちょっと不便になりますね。呪いそのものはもちろん、人には身代わりだとか道具だとか』
私自身にメリットとデメリットが常に傍にある術式。周りにはデメリットが来ない分、リベルタみたいなのが狙ってる。そういうのがあるから私ひとりじゃあどこにも行けませんし。
ほら、呪いもホイホイだし、リベルタみたいな呪詛師集団にも狙われる。悟にはいつの間にか1億で買われてたしね……。悟の件はまだ束縛されすぎない自由で良い方なんだけれど、かつての歩行者天国で悟に逢わず、素性がバレていたら噂の闇オークションとかされてたかもしれない。呪術界の(もしくは呪詛師界の?)築地的な競りとかさあ……。
以前はひとりでも行動出来た事が今じゃ全く出来ず、常に高専外では術師と行動をしなくちゃいけない。京都の歴史ある街も気になるけれどあまり外出歩けてないからなあー……。
へへ、と自虐的に笑えば西宮は足元の手当していたガーゼを剥がし終えて、ゴミ箱に捨てながら言う。
「ねえ……そうやって自分自身の生き方を諦めてんの?あんたは…」
『いえ。諦めてるっていうワケじゃあ……なんというか、生きるためにそうするしかないんで。自分の意志で変に行動をした結果、何度もたくさんの人に迷惑が掛かって、酷い目に遭ったし…』
悟だけじゃない、東京も…京都の人達も巻き込んだ。トラウマまで持ってしまった。組織に捕まってて抵抗が出来ないとはいえ、殺人に関わってしまった。その人が死ぬ致命傷を私の魂に焼き付けて、それを呪いや他人に移せるようになってしまった。
視線が少し俯いた所で、西宮が急にギッ!と椅子から立ち上がって私の両肩に手を置いた。少しばかり私よりも小さな彼女は見上げ、真剣な表情で。