第23章 突然ですが、さようなら
しかも怪我を負いつつも担当場所の呪いは全て祓い終えた、という話も聞いて。東京側と違い治療する呪術師が居ないというだけでこうも臨機応変にしている、というわけだけど。もはや京都の場合、学生というよりも戦士にも似た状況だと感じた。
怪我を治す、解呪に特化した術師が居なくても近いものだと一年の新田が居る。新田の場合、その怪我などの現状維持という術式。最悪瀕死でもそれ以上悪くならないようにして、処置なり硝子を呼んで……と今までやって来ていたみたいで。今はマリアが居るとはいえ、マリアはすぐに治せる術式は使えない。彼女は一般的な手当てには長けているけれど……。
これは、何度も私が京都に出張しに来るのは確定となったな、と学長の医務室皆勤賞以上にこれは深刻な事態だと実感して。
『……どっちも重傷で痛々しそうですね…というか、見ていて私も痛くなってくる、というか…』
「そりゃあ、もちろん痛いわよ?」
『じゃあ、どっちからとは言わず同時に治しておきます』
今の所、最大二名までなら同時に治せる。治療対象の患者用の椅子とデスク用の私が良く座る椅子、加茂と西宮は手の届く範囲だった。
加茂の瞳は閉じているようではあるけれど、西宮は目を丸くして口をぽかんと開けている。
「……は?」
『最大二名までなら同時に治せるんですよ、あまりそうする機会が無いだけで…』
西宮の腕と加茂の肩に手を置く、そして"髪夜の祟り"で式髪へと症状が移され、代わりに健康体へと"負"が"正"へと変えられていくふたり。
見える擦り傷、額や腕の傷がみるみる無くなっていくのが見えた。
「そんなの、聞いてなかったんだけど……?」
『言わなかった、というより使う機会がなくて忘れガチっていいますか…、もう治ったんでちょっと書類作成に付き合って貰っても良いです?』
私は現場でバリバリに呪いと戦う任務よりもこっちでお給金が発生しやすい方であって。分かる所は記憶が新しいうちにしっかりと記入しようと、見える位置にバインダーが無いもんだから医薬品の取り扱い最新版という厚手のブックレットを手に持って下敷きとして使い、ふたりの近くに立ったままペンを走らせていく。