第23章 突然ですが、さようなら
211.
──医務室のドアを開ければ、頭や腕などに包帯を巻くふたりがこっちを見ていた。白い包帯は所々に血が滲んでいて、赤く染まってる。医務室に入ってすぐ、来客用の椅子に西宮が、デスク前の私やマリアなどが座る治療者が座る椅子の方に加茂が座ってる。
西宮は細かい傷が複数顔に付けられ、右目をガーゼが塞いでる。そのガーゼの白い生地を赤く、血も滲ませて状態は良くないって確認せずとも分かる……。そして左頬と額にガーゼを当てるように貼り付けていた。座っているから見える脚にも血が滴った後。ここから見えない、黒い制服のスカート内の脚が怪我してるんだと思う。
一方加茂の方は大きめなガーゼを左頬に貼り付けてあり、やはり目立つのは頭部をぐるりと包帯が巻かれている事。左頭部に血の滲んだ跡でこちらも白い包帯が赤く染まっている。そして右手には添え木二本とぐるりと巻かれた包帯。これを見るに骨がやられてるってのが確実なんだとは思うんだけど。
戦う術を持っている呪術師がかなりの大怪我を負っている。今まででここまで酷いのは見てなかったから口をきゅっと一文字にして、さっきまでダッシュしてたのに背後でそっとドアを閉めた。
静かに加茂の直ぐ側のデスクに辿り着いて、一度咳払いをして。
『これ、は……任務、で?かなり重傷では……』
一体どんな戦いをしたんだろう。命がけとはまさにこの事。電話で聞く加茂の声色からして落ち着いていたので、ここまでヤバイとは思わなかった。引き出しから二枚取り出した紙。これはゆっくり書いてる場合じゃないや、とひとまず怪我をした状況だけをふたりに直接聞きつつ治そう…と思う。
ふっ、と余裕そうに笑う加茂と、片目でじっとこちらの様子を伺うように見上げている西宮。
「そろそろハロウィンのという事もあって呪いの出現率も多くなっていてね……、私達が向かった時期・その場所の数が調査時以上の数に増えていてこうなってしまったんだ」
「東京と違ってこっちは治療に長けた術師がいないって事もあってさ、こっちはこういう応急処置には慣れてんのよ」
『へ、へえー……』