第3章 呪術を使いこなす事
「……」
少し視線を逸らし、何かを考えているようでふーん、と相槌を打って、視線を私に戻す。
私は続けた。
『話、逸れちゃいましたが。表面上なら"表面"で区切るべきだと思うんです。それ以上をその…、向こう側が遊びとして弄ぶのならば恋人っていう設定は止めて欲しいかなって思っているんですね』
一昨日は仕方ない。様子見の祖母にそう思わせる為のベッドインを見せていたのだから。
でも、朝のは違う。間を置いて、ゆっくりと朝の件を伝えた。
ノロケとかじゃない。自慢でもない。危機感として…自分自身の貞操と、悟の後悔がないようにという事。
……この関係をしばらくを続けていたら、どうなってしまうんだろう?
終わりと言って終わらせてば何もなかった事に出来るのだろうか?
何も残らないだろうか。影も形も、心にも。表面上の恋人を終わらせて本当に何も残らない?
表面上を謳って、遊びの状態で絡まれて私はこのまま耐えきれるのか。芽生えてきそうな感情を私は処理出来るの?
渋い顔をしていた家入は眉間を押さえている。
言うべきじゃあなかったかなあ…。でも、同級生かつある程度制御出来てるように見えたから相談出来るかなって思ったんだけれど。
「あとちょっとだけ続けてて。ハルカ、酒は飲める?」
『飲めます』
「即答だな、宜しい。後で飲みにでも行った時にでも色々と話そう。近々行くか、」
"はい、これ連絡先。"と互いに連絡先を教え合った。
プライベートの付き合いでも連絡するけれど、もちろん怪我人が来た時は私の呪術を、術式として使っているか自覚するまでは怪我人がやって来たら連絡をくれるのだという。
互いに携帯をしまってちょっとだけ沈黙が流れた。
『あの、』
「ん?」
『家入さん的には、どう思いますか?その、敬称略にしないととんでもないことになるんで言わせていただくと……悟は』
うーん、と背もたれにより掛かる家入。キャスター付きの椅子は背もたれ部分がキイ、と軋む。
組んだ脚の上で指を組み、天井を見つめた顔はやがて私へと向いた。
「いつまでも馬鹿やってるガキンチョって感じだな。同級生としては悪いやつじゃないんだけど。
で?ハルカはどうなんだ?」
『性格が宜しくない』