第22章 キミは蜘蛛の巣に掛かった蝶
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歴史上、目立った行動をした呪詛師についてを呪術の授業で学習していた時だった。
「……鳴ってますね」
『…ウン、早速かあ……』
新田の視線の先、私のウエストポーチの中でブブブ、と私の携帯が震えてる。補助監督生による授業中、その教師モードの中高年の男が私達の私語に思わず振り返ってじっと私を見ていた。授業よりも優先しろって言いたいのは分かる。説明していた口を閉ざして、携帯での通話に支障が無いようにしてるってのも。
片手を挙げ、先生に伝える。『多分、医務室への召喚です』と。それに対し「許可は特に取らなくて良いから電話に出ていいぞ」という言葉をもらって。
取り出した携帯を手に、通話をタップして耳に当てる。新田も先生も黙ってじーっと授業を中断して見ていた。
"もしもし、五条ハルカさんの携帯で?"
『……はい、そうです』
まだ、五条って呼ばれるの…照れが出ちゃうな。
みたらいと呼ばれた回数よりもまだまだ少ない、五条と呼ばれる回数。好きな人とおそろいの苗字、早く慣れないとなんだけど。
携帯の向こうでは冷静に女性の声で状況説明がされていく。
"調査中、2名が呪霊によって負傷しましたので、大至急医務室へお願いします"
『了解です、すぐ行きます』
通話が切れ、先生を見ながら開いたテキスト等を纏めて閉じて乱雑に机に突っ込む。恐らくはこの授業中に戻れないかも。あと十五分の中で戻れたとしても内容も飛ばされてるだろうし。終わるのを待つ訳にもいかない、授業よりも治療が優先と昨日聞いてるし、今日も確認してるしね。急ごう、医務室へ!
『怪我人が居るそうなので医務室に行ってきます!』
「あ、ああ、早く行ってあげてください」
「片付けについては気にせんで良いです、俺がやっときますよ。だからハルカさんも医務室早く行ってきたらどうなんです?」
片付け、といってもさっきの机に突っ込んだものがはみ出してるくらいだけれど。それを新田が片手でぐいぐいと押し込んでた。
片手を新田へ挙げつつ私は走る。
『じゃあ宜しくー!』……と。