第3章 呪術を使いこなす事
真ん中に立って困った、というより呆れた様子で目の前を通り過ぎる私達のどっちかを眺めている。
私だっていい加減止めたいけれど、追う方がしつこい。本気でしつこい。
『そうやって私をすーぐ狙うの、理解出来ないんだけど。家入さん困ってるんで、止めてもらえます?』
「キミが!止まるまで!追うのを!止めない!」
『初代のジョースターかよ、その奇妙な冒険やめろ!』
ぐるぐると回りながら(止めてくれないので)そのまま話が進められる事となった。
「春日家から持ってきた書物には、術式順転のぱっと見て触ってるだけで回復しているような呪術は、"髪夜の祟り"って言うんだって!そこ、ちゃんと読んだ?」
『読んでます、のでちょっと追うの止めてくれない?』
「あはっ!じゃあその言葉は絶対に忘れないように治療時にちゃんと頭に意識して、それから怪我してる相手に触れた手に呪術があるという事をしっかり意識しとく!いいね?」
伸びた手に服の端を掴まれ、背後から腕で首を拘束されてしまった。叫ばれるは"ニーブラ!"という単語。サバンナを感じるBGMが聴こえてきそうだ。
本気じゃないだろうけれどちょっと苦しい。頭が固定されているのでほぼ正面に嫌なものを見ているという表情の家入、そして頭上からはわははは、と愉快そうに笑う悟の声。
『ぐぇ…っ、』
「ほら、硝子、面白いだろ?ハルカのニーブラ!」
公開処刑、というか捕らえられた獲物となった私を家入へと見せている。あれだ、スネ夫が新しいラジコン買ったんだ、と見せている感覚といっても良い。
……って。