第22章 キミは蜘蛛の巣に掛かった蝶
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携帯のアラームがけたたましく鳴って目覚めれば、東京から京都へと来たというのに今朝もいつもと同じ体温に抱き寄せられている。今日は腕枕付き。横になった悟の腕が私を引き寄せて、その表情は瞼が伏せてある状態でも全体的に緩くて幸せそうで。
手探りで手を伸ばすも私の携帯は鳴ってない。じゃあアラームが鳴ってたのは悟のか、と白いボディの携帯をなんとかして取ろうとしてみるけれど私の位置からは届きそうで指先で押しちゃって……チッ、面倒くさいな、と術式を使って引き寄せて。持ち主に似た、やけにうるさいアラームを止めた。
……五時?今、五時ですの??
睡眠時間しっかりとれてなくね?と渋そうな表情の悟(多分まだ夢の中)を揺り起こす。
『おーい、アラーム鳴ってたんだけど。新幹線?乗るんじゃないの?』
「あー……はい起きますぅ~…起きるから優しくおはようのチューして。僕のことテッテープリンセス…テッテープリンスみたいにさあ~キスで起こしてえ」
『……正気か?熱出してない?』
眠そうな、絶対に睡眠不足であろう優しい瞳の悟の額に手を触れる。熱はなく、ただいつもの冗談をフルスロットルで発揮してるだけだった。
ふっ、と寝起きで力なく笑う悟。ちょっときゅん、としつつそっと顔を近付けて優しくキスをした。触れるだけ……寝起きの体温が暖かくて柔らかい唇。
唇が離れ、『おはよう』と私が呟けば、至近距離で悟が離れようとする私の首の後ろに手を回してる。上半身を起こそうとしたのに阻止されて、ばふっ!と互いに向き合った状態でベッド上で横になってる。にこにこと笑顔な彼。
「こうして悟君はハルカにキスで起こされて短い眠りから覚めまして。そしてふたりは幸せに暮らしたとさ、めでたしめでたし」
『朝からエンジン全開だね、悟』
元気なことは良い事で。でも、早く起きようとしてるんだから、いつまでもこういう事をしてられないんじゃない?
私は6時に起きる予定だった。つまりは一時間も早く起きてしまったって事。にこにこしてる悟に『5時です』と追い打ちの時報を掛けた。