第22章 キミは蜘蛛の巣に掛かった蝶
『ん…、悟に負担掛かるじゃん。東京と京都の往復なんてさ』
「大切な奥さんの為ならそれくらいなんてことないさ。忙しいなら夕方に京都行って、一緒にご飯食べてのんびりして、一緒にお風呂に入って…えっちして。可愛い生徒の為にも……早朝に東京に向けて帰るよ」
たまになら良いだろうけれど、悟の事だからそれを毎日やろうとするのが目に見えてる。
日中はきっと任務だ。特級だからきっと過酷な内容、強い呪霊や呪詛師と戦って……朝と夕方にホームルームをして。そこから京都に来るなんて。そんなスケジュールを繰り返して、どこに休める要素があるの?
とてもじゃないけれど身体を壊す。その悟の案を想像するに身体だけじゃなくて精神的にもまいってしまいそうで。
……二週間の滞在に一回二回なら分かるけれど。この人、無茶するからなあ、と目を開けると撫でる手が止まり、首を傾げられた。
『無理しないで。私は悟にちゃんと休んで欲しいからそういうのは、』
「それくらい無理の範疇に入らないよ?ハルカに会う大事な時間だもん、会わない方が悟君のストレスが溜まります。そこ、分かってくれるかな?」
無理を通そうとしてるような返事に思わずため息も出る。
いつしかぶっ倒れそうだな……と心配ではあるけれども。しょっちゅう倒れてる私に言われて嬉しいもんじゃないだろうし、出来る限り負担を減らせる事といえば。
私が少し考えてる間に三度ほど撫でられた後、手を伸ばして悟の頬に優しく触れた。
『……毎日とかは駄目。二週間もそんな事繰り返したら私は気が気じゃない。心配になる』
悟が我を通すように、私だって我を通す。
負けないぞ、と目をじっと見れば彼の眉が下がった。どうやら折れてくれたみたいで。
「ちぇーっ、分かったよぅ。一日おきくらいにオマエに会いに行くよ…」