第22章 キミは蜘蛛の巣に掛かった蝶
199.
ピピピピピ……
『──ん…っ、』
アラームが鳴って仕方なく目を覚ます。私以外の暖かな体温に密着されながら手探りで音のする方向へと手を伸ばして、割と近くにあった携帯を掴んで音を止めた。
今日は京都に向かう日だから。昨日は楽しかったなー、たくさん食べて飲んで話をして……。もう朝、って事は今日は私、京都にキャリーバックを持って移動して、あっちで支度をしないといけないんだった。ゆっくり行っても良かったけれど、こっちに所用もあって丁度来ていた歌姫も居る。だから私は今日、彼女と一緒に京都に行こうって約束してる。眠いけど起きなきゃだなあー…。
静かになった携帯をコト、と元あった場所に置いた。
それにしても私の昨日の寝相、とんでもなかったのかな……起きたら下に悟が仰向けになってる。今は私が彼に覆いかぶさってるというか、そういう体勢…寝込みを襲ってるみたいな状態。
なんで?どうして……私、悟の上に寝てたんだけれど?すやすやと眠り続けている悟はベッドマットレスになる夢でも見てそう……。重くないのかな、と心配になるけれど定期的に上下する胸…大丈夫、圧死はしてない…!
自然とこうなったのかな、と寝ている間の表情は少し幼さを感じる寝顔をガン見しながら私は、昨夜について思い出していた。
……昨晩の事。居酒屋で悟の事を好きだとか自分で言ってるのを、ずっと私の直ぐ側の座敷から背中越しで聞いていたらしい悟。私の他ふたりが気が付かないのはおかしい。帽子やフードで目立つ姿を隠して過ごしていたのかもしれない。
始めこそニヤニヤしていた歌姫達もドン引きする程に悟はやや乙女気味に照れながら「キミってお酒に飲まれた時とベッドの上ではすごーく素直になるんだね?」って言ってきて恥ずかしさのあまりに泣きそうになった。ガッ、と座って振り向く悟の胸ぐらを両手で掴み、それをここで言うな!とかいっそ殺せ!とも言いたいのを言えずにただ堪えるだけ。
悟に中腰の状態で掴みかかったまま、振り向いてみれば帰り支度を済ませている最中のふたり。
『……発言を、取り消せェ~…』
「えっ、やだよ。本当のことじゃんそういう所素直になりなよ」