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【呪術廻戦】白銀の鎹【五条悟】

第22章 キミは蜘蛛の巣に掛かった蝶


そんな気が付けばヤツが居る……みたいな言い方されましても。首を掻きながら歌姫を見れば、ぐい、と一口飲んでまたジョッキを置く。さっきよりは少し軽い音でもガンッ!って音は変わらない。

『それでいいんですとも!……あれはあれで良いんですって!噛めば噛むほど味の出る、スルメ的な…』
「え~?それスルメに失礼じゃない?」

皿の端っこに乗ってるスルメを摘んで指す。皆が皆つまみだした謎の光景。私は即、そのスルメを口の端に咥える。しょっぱさの後に噛まずともじわじわと味が出てきてる。
長く楽しめるんだよな、スルメ。一度スルメを口から抜き、私も一口酒で口の中を清めた後に、もう一度咥え直す。噛めばじわりとまた味が出てきていつまでもいつまでも楽しめそうで。
この場に居ない彼もいつまでもいつまでも楽しめる人だからそう例えたってだけで。

「スルメ、ね……。先輩、この子は半ば五条が拐ってきたようなモンですから半分洗脳も入ってるかもしれないですね、ストックホルム症候群的な」
「拉致…?」
『合意です合意、このままだと死ぬよ?とか言われたらこの世界を知らなくちゃならないじゃないですか』

けれども洗脳されていない、とは言い切れない。私にとって普通と思った…いや異常だったけれど、部屋が貫通されてたり気が付けば常に悟が側にいれば彼の考えも聞くし、一緒に行動もするし。気が付かないだけで本当は洗脳済みなのかもしれないよね、私は。
咥えたまま前歯で小さく噛んで少しずつ短くなっていくスルメ。セキレイの尾の様に上下するそのスルメを硝子がじっと見てる。

「……振り回されてるの、ハルカ自覚してる?」
『自覚ありです…振り回されてるんですよね、』

惚れた弱み、と言いますか。言葉にせずとも分かってる。好きだから結局振り回されてるって事。
私が肩を降ろす所をふたりが見てる。

「ホント昔っから何考えてるか分かんないわね……硝子はどう?あいつの考えてる事一ミリでも分かる?」
「分かるワケがないじゃないですか、分かりたくもないですけど」
「あはは、やっぱそうよね~」
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