第22章 キミは蜘蛛の巣に掛かった蝶
198.
『「「おつかれーっ」」』
あまり乾杯はしないけれど今日はやっちゃうか?という気分でお疲れ様、と乾杯した。ゴッ、と重低音でぶつかるのはいかついジョッキ。私も硝子も歌姫もジョッキにビールが入ったものを掲げた。
前みたいに悟の乱入で強制退場の無いように、送ってくれた車が遠くに消えるのをしっかりと見届けてからの入店。ある程度飲んだら迎えに来てって連絡はするって伝えてるからこれで同性三人だけの飲み会が出来る。同性だけじゃなきゃ話せない話題だってあるし飲める相手との居酒屋ってやっぱり楽しいもんで。ずっと今日は朝から楽しみでしょうがなかった。虎杖に「なんか良い事あった?」って聞かれたって事はもしかしたら態度に出てしまっていたのかもしれないけど……!
本日の飲み会は座敷にて。各々好きな物を頼んで並べ、それらをつまみながら楽しく始まった。少し離れた席のサラリーマン達がはしゃぎ、大声で笑ってるのでこういう雰囲気がまた安心する。
……もちろんバーの落ち着く雰囲気も良いけれどね!
私からの、京都はこっちよりも呪いが多いのかって質問に頬杖をつきながら、歌姫はさっきつまんだ枝豆で汚れた指先をおしぼりで拭いてる。
「──…まあ、この時期の京都は観光客が特に多いからね。ハロウィンが定着してきてるのもあって国内外の非術師が集まるもんだから近年は呪術師達もイベント化してきてるわよね」
『やっぱり紅葉と京都の街並みは写真の撮り甲斐ありますもんねー…私もこの世界に踏み入れて無かったら今年辺り友人と旅行に来てたかも…』
ははっ、と笑う歌姫。
「そしたら大変な事になってたわね。旅行どころじゃなくて多分、ハルカが街中で動けなくなる事になって、うちの学校でスカウトしてたかもね?」
見えないからこその襲撃に何がなんだかわからなくなってるうちに保護されていた未来もあったのかもしれない。秋まで白髪化が進んでなければな、呪術に目覚めていなかったパターンの私の"もしも"。
桜のシーズンが終わってる時期に悟と行動を共にした時も彼は私を守ってた。それは見える様になって京都の市内を一緒に歩いた時だって私に近付く前に消える呪いを何度か見かけてる。