第22章 キミは蜘蛛の巣に掛かった蝶
「悟クンは?悟クンも居るんだよ?先生モードから旦那さんモードになってるよ?」
『ん、分かった。悟は高専に残ってなよ。……ステイ!』
つまりはお留守番。
ピーチをクッパに攫われた一大事にマリオだけが奮闘し、兄弟たる弟のルイージの如くばいばい!と手を振って家事をしながらお留守番するルイージみたいに、僕もハルカを見送って部屋でお留守番。
……お留守番とかマジリームー。
「やだぁ~~っ!」
ラグビー選手も真っ青になるくらいに、屈んでハルカの腰にがっしりしがみついた。タックル、タックル!視界外で歌姫の「うわっ」って若干引いてる声がしたけれど、きっと僕らのこんな微笑ましい関係が羨ましいんだろうね。僕とハルカはスキンシップ激しいから……昼も夜も。
『……縄とかあればここの鳥居に縛り付けていけるんだけれどなあ…、ここまでネオジム磁石っぷりを発揮されたらどっかで撒くのは難しいぞ…』
「撒くって何さっ!?キミ、僕を置いてく気満々だなぁ!」
言葉にせずとも分かる。もう目と目で通じ合っちゃってる。
ハルカの面倒くさ気な視線から"置いていきますが何か?"と今にも声が出てきそうで。
「じゃあ、せめて足として使って!アッシーするよ、僕!車で居酒屋まで送るからあっ!」
『ぐっ、重っ…!全体重を掛けてしがみついてるっ……!キロキロの身の能力者か、この人っ!動けん!』
遠巻きに真顔を通り越して冷めた表情をした硝子達が僕とハルカの取引を見守ってる。そうだよね、代行頼むよりも安全安心な僕の運転だから皆してハルカが折れるのを待ってるんだと思う。
出来る限り安全に。出来る限り一緒に居たい僕の我儘にきっと彼女は折れる。それを見越して僕は精一杯彼女に甘えながら、我儘を言いながら。ぎゅっと柔らかくてなんでも抱え込んでしまいがちな脆い身体にしがみついた。