第22章 キミは蜘蛛の巣に掛かった蝶
何この女特有のチームワーク。
責めるように畳み掛けてくるのはどうしてかなあ?僕と話しててストレスが掛かるわけがないでしょ。ハルカにはちょっかいを掛けるのをやりすぎれば当然怒るけれども大体は受け入れられてるし。
そんなやり取りをしていれば、『あーっ!』という声。噂をするからご本人の登場ってワケだ!僕が振り向くのと同時に背にさっきまで僕を責めるふたりの、ハルカと呼ぶ声。
着替え終えて外行きの支度をしてきたらしいハルカはにこにこと手を振ってる。いい笑顔、可愛いなあ……なんて僕が彼女に振り返すと『悟じゃないぞー?』とちょっと真顔に戻りつつつっこまれた。
……いいじゃん、僕にだってさっきみたいににっこにこで手を振ってくれても!ドックランで飼い主見付けた子犬が遠くから駆けてくるみたいな感じできゅんきゅんしたのにそれが硝子や歌姫に向けたもので僕への対応じゃないとかなんなのさ?
ファンサをもっと僕に頂戴!不服になってちょっとだけ口を尖らせた……ちぇっ!
目で追えばハルカは先に待つふたりの前で足を止める。硝子は軽くハルカに手を挙げた。
「おつかれ。私の非番中なんかあった?」
『いつも通り、ボチボチ負傷者が来るくらいですよー。今週は5人分、書類はいつもの所に入れてあります。歌姫さんもこっち来るの久しぶりですね!』
「久しぶり。パーティー以来ね!元気じゃないハルカを見る事が多かったから元気そうなあんたを見れて良かったわ!」
僕抜きで盛り上がる三人。仕事があーだパーティーの時の料理がこーだ労働環境がどうたらこうたら休みが合ったら旅行だとか目的地に行く前のここで花を咲かせてる。ここにムードメーカーの五条悟君がいるんですが、そういうプレイじゃないよね…?
ちょんちょん、とふたりとの会話を楽しむハルカの肩をつつき、自身を指差した。きょとんとしたハルカは話を中断して僕だけを見てる。