第22章 キミは蜘蛛の巣に掛かった蝶
197.
朝教室で別れてから、時々見かけるハルカを、すぐ近くでも遠くからでも僕はずっと目で追っていた。るんるん、という言葉が似合うような上機嫌な様子。放課後が近付く程に機嫌が鰻登りに良くなっていく彼女。
にこにこ笑顔メーターが僕との沖縄デートを100としたら、74を僕の目で観測してる。いや、そんなメーターないし知らないけど。
ホームルームをするためにと、今日何回目かの教室へと向かってる。座学などの教員に邪魔にされるから追い払われる度に教室から締め出されてるんだけれど。一年は僕の担当だからね、邪魔は入らないってもんで。
……任務?他の術師に回したから今日はフリーって事で。
今日は硝子のシフトの休み(といってもハルカにも手に負えないものは呼び出すんだけど)最終日で、かつ京都から歌姫が東京にやって来てる。だからこの後ハルカがそのふたりと合流するって話。僕ナシで!酷くない?えっ女子会ってヤツ?
昨日、硝子からの誘いの連絡を即答してたハルカ。
「僕も女装すれば混ぜてくれる?」ってハルカに、唇に指を当てつつ上目遣いで聞いたらしばらく考え込んだ後に『悟から五条悟という成分を全て削ぎ落としたら来て良いんじゃない?』って。別人やんけーっ!ってハルカの腰にしがみついて駄々をこねたけれどハルカは連れて行ってあげるだとかしょうがないなあ、だとかそんな言葉を発しなかった。
そう、僕の同行を一切許さず。
ナンデ?今日飲みに行くじゃん?明日はハルカ、京都に行くんだよ?今日、お部屋でまったりと秋の新作スイーツを食べつついちゃいちゃしたかったのに……。独り占めを出来る時間を取られて、しかも僕は抜きときた。なんなのよ、僕がうさぎなら何回死んでると思う?リスポーン地点からずっと動けない状態だよっ!寂死過ぎて(寂しいと死ぬを掛けてるよ!)部屋でなんてじっと出来ない。
明日からの京都についてだってハルカは爪をぱちんぱちんと切りながら『基本、個人行動しないし高専内で過ごすから来なくて良いよ』だって…!悟、サミシイ!!