第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
近くのクレーンゲームの景品の、女の子のキャラクターが寝そべってる二頭身のぬいぐるみにチャレンジしてる子を見つつ、良い台があればやりたいな、と左右の景品を見て回って。
……私の呪術にデメリットが無ければ良かった。デメリットがあるから慎重にならないといけない。死ぬことに恐怖や未練がなければデメリットを恐れずにやっていた。でも生きたい。もっと生きたい。そして性格上サポートではなく足並みを揃えるように突っ走りたい。
……そんな事をすれば命を捨てる無鉄砲さになるから出来ないってだけで。
悟くらいに特別なものであればよかったな、なんて斜め上を見る。じっと見てた悟の視線とばちりと合った。
「自分じゃ気が付かなくてもハルカの良い所、ずっと側に居る僕はたくさん知ってるからね。こういう所で発揮するのもハルカのその良い所のひとつなんだけれどさ。まだまだあるし、そして見付け切れてないってのもある。
……そういう事、学生時代に…。もう叶う事なんて無いだろうけれどさ。お互いが学生である時に少しずつ知ってもっと仲良くなって、時々喧嘩して今の僕達みたいな愛を育んで来られたら良かったよね」
少し残念そうに笑った悟。確かにそれは二度と叶わない。私達は生まれ落ちた時間が離れてた。それを飛び越える方法を知ってる。でもその方法はここに来る前に悟自身で完全に破壊してた。
あれは本来あってはいけないものだった。
それでも私達を繋ぐ為の架け橋にもなれた、まるでその為だけに存在した呪物だったように。
彼の記憶が戻った今、記憶を作った私もそれを共有してる。
これ以上過去にどうのこうの言ってもどうにもならないから、これから先にそのやりたかった事をすれば良いんじゃないのかな、と少し残念そうに眉を下げてる悟を見て笑う。
『今の私達で充分じゃない?色々あったけれど充分に時間はあるんだから。同じ学年とかで関係を築いてくのも良いけれどさー……、』
店内をぐるりと回って来て、見つけたエアホッケーの台。思わず、『あった!』と言葉を呟いて今は誰も遊んでないそこの前に私達は立つ。
『足並み揃えて高専時代を過ごさなくても、こうして悟と一緒に過ごせるのは私、いいと思うよ』