第3章 呪術を使いこなす事
『…わわっ、』
「呪力を意識的にぬいぐるみに流さないと、ツカモト2号は起きて甘えたがりモードになるからねー、呪力のコントロールを日常的に出来るようにするから、映画鑑賞やゲームをしたりして感情が揺れ動いても呪力はキープ出来るようにしていこうね」
どうやんだろ、こうかな…、と首にしがみついて顔を擦り寄せるコアラに触れるとまた健やかな寝息を立て始める。
あっ…こういう感じにするんだ、と見ると目を覚ましたので慌ててさっきのように触れてまた寝かせた。ふぅ、とひとつため息が飛び出る。
『夜蛾学長、こちらでお世話になっております。みたらいハルカです』
コアラに触れながら、起こさないように自己紹介をした。
「悟が随分と気に入っているようだな。何か困ったことがあれば力になろう」
常に困っています、と言いたい。じっと床で足を放り出してくつろぐ人物から学長へ視線を上げた。
部屋の壁どうかして下さいとか、28歳児の距離感をなんとかして下さいとか。困ったことはありますけれど。
『ありがとうございます。しばらくお世話になります』
フン、と笑う学長。
「……慣れてきたら、悟。みたらいを学生として受け入れるのも考えてくれ。春日ならば貴重な医療術師になる、もちろん面談からだが」
「そうね、反転術式まで可能になったらもう、学歴付けて術師として自分の好きに生きてった方が良いかもね」
そうなればまた私は学生をする事になるのか、と眠るツカモト2号を撫でながら一度くしゃみをした。