第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
195.微裏
瞬きする間に、とかいう言葉があるけれど。
正にそれ。本当に一瞬で風景が変わって、空気も変わった。夏の光景が一気に秋になってる……涼しい気温が過ごしやすい。目の前にはあちこちにススキが生えてて、それから……。
「……おかえり、ハルカ」
アイマスクをした悟がその場に立っていた。行く時のまま、そして先程よりも古びたカメラを小脇に抱えて。
『あ、れ……?ただいま?さとる…』
どうしてここに?行く時は森の中だったのに。その答えはきっと私が過去で封じ込めた記憶をもう一度開封してるから。さっきの高専一年生の彼がここでカメラを使ったって記憶があるから。
にっこりと笑う悟。私におかえりと言う声は優しく、さっきまで一緒に居た悟の荒々しさが無くなってた。おお、これが成長か……と感動すらある。
「任務は無事終了だよ。この件は上に報告しなくて良い。面倒な報告書はナシ!……だって個人的な任務だしね?」
『えっ個人的な?公式のじゃないの?』
うん!と元気に頷く悟。アイマスクを首まで下げて青い目を細めて。
「だってこれは僕の封印されてた記憶に纏わる事件だからねー……この呪物も特殊なモノで普通であれば片道切符みたいなものなんだよね。ハルカが現在から過去へ、そして現在に戻ってくる往復は奇跡的なもの。
……こんな危険なもの、上に提出出来ないよ。よって、」
背後にポイッ!と投げ、その方向をその青い瞳でちら、と見る悟。ポラロイドカメラがベキベキ、バキィ!と大きな音をたて、恐らくは敷石があった辺りにパーツを撒き散らしながら落ちてる。大きな部品が派手な音を立てて玉砂利の上に落ち、細かいものがススキや砂利にパラパラと落ちていく。もう二度と使えないものにしてしまった。
視線を私に戻す悟ははあ、とため息をついて。
「……もう、必要無いしね。僕とハルカは違う世界でもきっと、何度もこういうの繰り返してたんだよ。卵が先か鶏が先か…、始まりなんて考えたらキリがないし、僕らの出会いはハルカが言い始めたのか僕が提案したのか……そんな事、余計に糖分消費するから考えたくないけど」