第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
あいつにまた会えるよな?本当にまた会えるんだよな?
あの柔らかな感触を思い出して笑顔をもう一度思い出す。写真は撮ったはずなのに地面には落ちてない。いつまでもカメラから吐き出す気配も無い。
だんだんとさっき逢っていた脳裏に浮かぶ女の像が俺の中がら薄れていく。なんだっけ、どっかの一族とか言ってた…気が…。
ひとり呆然と立ち尽くして頭の中で整理した。手に持つ呪物のせいなのか、その辺りは良く知らん。けれど記憶が抜け落ちてるのは良く分かる。
あいつ、名前、そうだ、あいつの名前ってなんだっけ?さっき一瞬忘れかけたんだけど…。
片手に持つカメラ。呪力を感じる。俺、なんでコレ持ってんだ?任務だってカメラ持って…さっき、誰か写してたよな?誰かに直接頼まれたのにぼんやりとしてきたんだけど……
脳みそをフル回転させた。
まだ、頭にぼんやりとした面影があった。どっかに消えて無くなりそうな面影が。何故か知らないけど、頭からサラサラと"なにか"がゆっくりと抜けていくような感覚があった。その"なにか"は俺にとって凄く重要な事で…。
頭で考えるだけじゃどうにもならない。口から精一杯考えを吐き出す。そうすれば言葉にしようって事やもう一度耳にして記憶に残るハズだって、暗記とかするに良いぞって硝子も言ってた。
「たし、か…ハルカ、ハルカって言った!ハルカ、ハルカ、髪が長かった、なんか色着いてるのと薄い色の二色で、どっちだったかメッシュみたいになってた…、女の子だった、多分制服着てたから学生!どっかの生徒だったような…っ!あークソッ!なんだこれ、気持ち悪りぃな…っ!俺、呪霊になんかの術式食らったか!?
名前、名前……あいつの名前…クソッ!さっき俺、叫んでたろっ!バカタレ!トんでんじゃねえかっ!」
片手で頭をがしがしと掻いた。
その手で口元を押さえる。口の中に僅かに血の味がしてる。俺が怪我なんてそうしない、さっき凄い体験してたハズだ、いくつの女だったか、子供でもババアでもないけどなんかイイ感じのヤツとキスしてたと思った。
俺にとっての初めてのキスだった。夏の暑さにやられての妄想じゃない、確かにイイ所までしてた。どこまでだったか知らねえけど、勃ってるから多分ヤッてはいないのか?じゃあ俺はどこまで"あの女"としたんだ…!?