第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
受け取ったカメラの本体をじっと見る。古臭いカメラにヒトの想いは詰め込まれるに相応しいなって思う。
『じゃあ、お願い。のんびりしすぎたから急ぎでね』
「……このカメラはどうすんの?」
『さあ?私は先生にそこまで聞いてないから。分かんない。悟がしたいようにすれば良いんじゃあないのかな?』
俺側のダイヤルとかが奇妙な数字になってる。日付だとしたら明らかにおかしい数字で今年じゃないし、月日も時間も全部デタラメ。じゃあ座標だとか決まった場所だとか色々考察しながらその数字をじっと見てたら『それはいじらないで』と言われた。ハルカが大事に想う家族の元に戻るならそれはいじらない方が良いんだと俺はいじらなかった。
「……いじってねえよ、見てただけ」
『ほんと?悟ならいじり壊しそうだから心配なんだよねー…』
「そこまでガキじゃねえよ?……ほら、今から撮るからじっとしろ」
小さな窓から覗き込んだ。俺に気が付いたハルカはにっ!と笑ってピースしてる。遅れてもう片手も。なんだよ両手でチョキチョキしやがって……カニかよ。あーもう、ひとつひとつの行動になんの関係を結んじゃいないのに(キスはしたけど…)勝手に彼氏面してる俺がいる。可愛いんだよ、コイツ…なんなんだよ、クソッ!
……次、会ったら絶対に俺のモノにしてやるからな。
「はい、チー…」
『そこは"にーたすさんは何条ー?はい、五条ー!"じゃない?』
「…はっ!ンだよそれ、癖強すぎだろ……」
へら、と笑ってるその様子を見て俺は普通にシャッターを切った。
カシャ、シュイーー…ン、とフラッシュの音が長く続き、カメラの小窓の中にあいつが居なくなってて。
「おいおい、マジで居なくなるの?ハルカ……」
流石は呪物って所だな。カメラの小窓から実際の風景を確認したら居ない。写真はポラロイドカメラのクセに出てきてもいない。
あの、不思議な髪色の女が消えている。
「木の幹に隠れたとかそういうイリュージョンじゃねえよな、……ハルカ、」
ハルカ…って名前のタメの女をもう一度頭にはっきりと思い浮かべる。可愛いけどちょっとヤンキー臭する女だった。