第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
「チッ……世話の焼けるヤツ!」
一階の個室のドアを開け、真っ先に向かう場所は棚。そこにあった大きな古臭いデカいカメラ。これに違いない。
それを持って階段を上がっていく。ドアは全開だから最後に入った部屋は分かる。その部屋に足を踏み入れた。
「おーい、おせえんだ、よ……」
くた、とベッドに座ったままに、横へ倒れた姿。呪いにやられたワケじゃないみたいだった。それにベッドだから眠いってワケじゃねえ。上着を脱いで腰に巻いてる。この部屋は蒸し暑かった。
呪いとかと戦って、じゃなくて熱中症だかなんだかで倒れるとかみっともねえんだけれど?
幸いにもベッドで倒れてるから簡単に抱えやすい。横抱きにして、腹にカメラを置かせて二階から急いで外へと走った。外の方が涼しいしいくらか冷えるだろうって。
木陰の下でそっと寝かせて、膝に頭を乗せる。俺は上着を脱いだ。そして畳んである程度の高さを作って地面に置いて、コイツの枕にした。
くた…、と力なく倒れてる女。今は気を失ってるだけだ。
よくみりゃ結構、キレー目で可愛い………
いや、何考えてんだよ。変な事考えたらコイツが目ぇ覚めた時に目も見れねえ。
でもバレないならこの可愛い寝顔をじっと見たくなるんだよな、と覗き込めば開く双眼。ああ、良かった。割と早めに目が覚めて。下手したら高専の車に乗せて連れ帰ってたかもしれねえし。
「おっ、気が付いたか?」
初めて会ったのに、初めてじゃないくらいに馴れ馴れしい女。やっぱり俺は振り回されてる。
コイツの事、まだ良くわかんねえ、のになんだか気になって。わざと機嫌が悪いフリをしてもがんがん着いてくるこの女がもっともっと知りたくなった。
……ちょっとじゃれ合った時にすごい至近距離になってあまり近付きすぎるのは危険だって思い知ってさ。
今回の任務についても聞いた。
それは俺から聞いても簡単な任務、けれどもなにか引っかかる。任務のお礼のご褒美ってのが気になって、最初に出された飴については拒否っといた。
そしたらやっぱり、コイツはおかしい。
『………キス、してあげるのは?』
「は、はああ~~っ!!?」