第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
『飴あげっから!飴チャン貰っとき!』
大阪のオバチャンかよ。
貰った棒付きの飴を剥いて口に入れたら甘酸っぱい。これ何味だ?と調べようにも包んでたのは捨てた。そいつを拾ってポイ捨てすると身体が呪霊に変換されてくとか言って。そういう術式の術も、と思うにもコイツの態度で冗談だったって事に気が付いて。
もやもやする。なんだかこの女と一緒に居ると俺が俺じゃないみたいに行動が振り回されてんじゃねえの…?
『ほらほらちゃんと歩く』
腕を掴まれて強引で。
「おい、引っ張んなって!自分で歩けるし!てか、手!何掴んでんだよ!」
なんで俺が会ったばかりのコイツに振り回されてんの?そう疑い始めた時には既にコイツのペースに完全に飲まれてて焦った。多分、焦ってるから心臓が驚いてんだと思う。バクバクいっててうるせえし、真夏のせいか日陰でも顔が熱い。
『ちゃんと歩いてくれないから引っ張ってんだよ。手っていっても恋人繋ぎじゃないでしょ、もしかして悪ぶってるけどピュア?』
恋人繋ぎってなんだよ!?悪ぶってピュアだとか抜かして、この女は!俺の事馬鹿にしすぎだろ!
「はあ!?自分で歩けば良いんだろっ!自分で歩けばっ!……チッ!とりあえず離せって」
チッ……ほんと調子狂う。
自分の気持ちが良く分からない。あいつが知りたいって思う気持ちだとか離れたいって気持ちとかぐるぐるして混乱して。
だから俺はその場から逃げ出した。逃げ出して森を抜けたのは良いけど、なんだかやっぱり気になって用を済ませたはずの建物の方に足は向かってた。あいつは絶対にこっちに来る。だって任務っつってたし。
……散々振り回したんだからこっちが振り回してやるよ。めいいっぱい驚かしてやるよ。腰抜かして悲鳴上げさせてやる、なんてニヤニヤして考えながら待っていれば、ドアの隙間から白いのかしゅるしゅると入り込んでるし、こっちの予想外な事してくる。あいつの呪力を感じる、変な呪術。
つか、ピッキングする前にドアが開くか先に確認しろよ!驚かせねえだろっ!
「開いてますよー、おいおい…しっかりそういうの、確認しろよ?」
そういってこっちからドアを開けてやれば確かに驚いた顔は見れたけれど俺的にばーん!とか大げさに驚かすつもりだったのに静かな驚愕はこっちとしても意外でさ。
どうして祓い終えてるのに手伝うのかって聞かれた。