第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
「……まっ、今は持ち主居ないから別に良いよな…」
結構派手にやったなあ。ポケットに手を突っ込んですぐに踵を返し、階段をリズミカルにトットット、って下がって。木陰でのんびりしてから迎え呼ぼうって考えてた。
「………あ゙?」
…なんだ?今、感じた呪力。
来る時や祓ってすぐには感じなかった、森の中に何かの気配を感じる。大きな何か。そんなに遠すぎるってワケじゃねえ、急にボッ!と現れたくらいの存在感。他の術師にどう感じるか知らないけど、六眼にはひとつの存在が森の方に見えてさ。
森の中じゃ涼しいしついでにその存在を確かめてみようかな。木陰でのんびりしてた俺は、建物から出た後にはすっかり帳の上がった夏空の下、なるべく日陰を歩いて敷地外の森の中にと足を踏み入れた。
さくさくと足元の杉の葉っぱの音。遠くからこちらにゆっくりと近付く気配。俺に気付いてるのかは知らん。その正体は人の形をしているけど、あれは……なんだ?
目を凝らせば人間。近付けば黒に身を包んだ呪術師のような。
片手を上げてこっちに合図してる。俺もした方が良いのか?って遅れてこっちからも合図を送って。
近くに寄ってみりゃそいつは女、高専の服着た女だった。呪術師にしてはちょっと変わった呪力で、多分無意識に薄く纏っている呪力。うねうねと触手とか太陽のフレアみたいなやつがうねってるように見える。
前、傑と部屋で借りて見たもののけ姫の、女ふたりが戦う時に割り込む、アシタカの腕にうにょうにょしてたちょっとキモチワルイのをマイルドにした感じ。
「何、オマエ…?呪霊って事じゃないよな?」
髪が長くて、金髪と薄い茶色の間の毛色と、白髪が混じってる。白髪の俺が言えたモンじゃねえけど、中途半端な白髪具合。サイドの白の塊もあれば、あちこち点々としてる白。多分、白じゃない方が地毛なんだとは思うけど。けど苦労しての白髪だなんて思えねえ。
少し気の強そうな感じもする顔つきの女。男とか素手でぶん殴ってそうな感じがする。苦労……するか?こんな女がさ?
女は両手を顔程まで上げ、降参の意志を見せて俺から半歩離れた。苦笑いを浮かべて。
『呪霊なワケないじゃん』
「ふーん?オマエ、何その呪力。細く鞭打ってンの」