第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
「……誰?待ってるって」
『誰、って。家族、だけれど?』
嘘は言ってない。家族というくくりのはず。疑う様に悟は「ふーん、ふーーん、ふーーーん?」と私の言葉を受け止めてる。先生って言えば良かったかも…けど今更訂正して、家族が先生ってどういう事?と突っ込まれる。ここは家族を通していこう。
そして悟の手が私の手を掴み、「こっち左?」と確認して、指でつまむのは左手のアクセサリー。熱くて大きな手は変わらない。指輪を抜かれそうになって、指を曲げて阻止した。無くしたりしたくないし…。
そんな私の態度が原因か。更に不機嫌になったような気がする。
「これ。恋人でもいんの?呪術師のクセに?」
『……』
呪術師のクセに…って。
言いたいことはなんとなく分かるよ。いつ死ぬか分からない、死んでも肉体がきっちり残るかすらも分からない呪術師が恋愛なんてそう出来ないって事。
……いや、疑うあんたが恋愛という関係性を進めてきたんだけれどね?
ここで変に恋人からっていうと、呪術師のクセに恋愛とかダッセー!とでも口から飛び出してきそうな悟でもある。もしくは学生たるもの恋愛にうつつを抜かしてんじゃねー学習してろよ、とか。
若干腑に落ちないけど。ムッとしながらも左手の宝物を悟に堂々と見せつけた。
『……大事な家族からの記念のプレゼントだけど?』
なにか??
堂々とした態度に私の手に触れてた手が離れていく。視線も指輪や私から思い切りそらされて木陰の地面へと向けられていた。
「あっそ。まあ……そうだよな。高専一年で婚約指輪とかってねえよな……」
『なんか言った?』
「何でもねえよ!独り言!ヒートーリーゴートッ!」
暑くて機嫌がめっちゃ悪いわ……ガラも悪いし。
緩く背に回されてたもう片方の腕が離れて、悟は「邪魔、退いて」と言って立ち上がる。私もそれに続いて立ち上がりながら土や木の葉を払う。
呪物であるポラロイドカメラは足元にある。その存在に気をつけながら。
そして恐る恐る、ちょっと機嫌が悪そうな彼を覗き込んだ。