第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
それは任務だからここにひとりで居るわけで。
体を張るのは悟だから、記憶を封じ込めるからであって。
自分の命が惜しくないってわけなんじゃない。死にたくはない、死にやすいけれども怪我をしても自力ですぐに治せる術式を持ってる。
伝えたいのに伝えられないもどかしさで私は一瞬言葉を出そうとして唇を閉じる。駄目、ムキになって反論したら今の私なら墓穴を掘りかねない。抑え込むのも大事、冷静にならないと…。
私はそのまま首を左右に振って、今にも連絡しそうな悟の携帯に手を伸ばす。やめてって視線で訴えるように青い瞳をじっと見て。
ひょい、と私から遠ざける悟は楽しそうで遊んでるみたいに私をからかってる。
「ほらほらどうした?」
手を伸ばせども躱されて、まるで猫じゃらしに弄ばれる猫みたいにムキにもなる。さっきの携帯の待受騒動の時と立場が変わった。
必死に連絡しないようにって黙って私は手をのばす。だって連絡されたら私の名前が生徒名簿に無いことが発覚する。この時の私は小学生であって、呪術なんて知らない。その世界に生きていない非術師なのだし。
土の上で膝立ちをして、悟の頭上に持ち上げられてる携帯に手を伸ばした所で悟の片腕が私の背に回された。座った悟にそうされたならば、実質バランスを崩してあぐらをかいてる悟に倒れ込むように、片手で抱き止め、ぎゅっと彼に抱き寄せられてる。
「……死ぬには、まだ惜しいだろ」
腹部に顔を埋める悟。同じ悟でありながらにもぎゅっと抱きしめられてるこの状況にどきどきとした。これは、浮気じゃない…よね。同じ人であるのだから。
そのいつもよりも短髪な白髪をそっと抱え、ゆっくりと撫でた。パチン、という音。折りたたみのガラケーを閉じて背にもう片手が回されて。
ぎゅっと抱きしめられながら、悟はぼそっ、と呟いた。
「死んだら二度と会えないだろ…っ」