第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
がしがし、と頭を掻いてる悟。明らかに誤魔化してる感じでからかいたいのを我慢して。遠慮がちな彼に軽く説明をする。もちろん、記憶を封じ込めるなんて一切伝える気は無いのだけれど。
『それが出来るならしたけれど、カメラで撮ったらここから居なくなるもん。報酬未払いになるでしょ』
「……は?」
悟の全ての動きがピタ、と止まった。目を見開き、怪しむようにただ私をじっと見てる。変わらず周囲は蝉の暑苦しい鳴き声が、人の気配は全くなくて私達しかこの場には居ない。
「……今、なんつった?ここから居なくなるってどういう事?」
あれ。空気が変わった気がする。
余計な事を言いすぎたかな?必死に今だけを取り繕う為の言葉を、覆い隠せる嘘を自分の頭で必死に探した。どうせすぐに術を掛けて忘れるのなら、それがバレるのはずっと先の話。私にとってはきっと帰ってすぐの話だろうけれど。
警戒する視線が刺さるように痛い。例えサングラス越しでも真っ直ぐとは見れなかった。だから必死に彼の顎や喉仏の辺りに視線をやって誤魔化して。
「なあ、なんだよ?居なくなるって。呪物を使ったらオマエ、どうなるんだ?」
『……帰るんだよ、直帰。おつかれサマンサー!って呪物を使ってドラえもん気分で』
怪しむ視線の悟がずっと私を突き刺してる。素直に受け止めるのかどうかは表情で分かるもんだけれど。
ふーん、と零す悟はポケットから携帯を取り出し、パカッ、と開いた。そして私を見てニヤリと笑う口元。
「俺は直接京都のヤツらの番号は知らねえけど。センセーとかに連絡してハルカって名前のヤツについて聞いていい?」
『……駄目』
多分、それはしてはいけない。私が初めて高専に行った時に皆新鮮な反応だった。それは多分私と本当に初めて会ったから…。だから今回の任務では悟だけとのやり取りで全てを終わらせなきゃ。
携帯を持たない手で悟は私を指差した。
「オマエさ……、呪物で自害とか考えてねえだろうな?無鉄砲なクセに弱いのにたったひとりで任務っつってここに来たり、体を張って俺に褒美っつったり。なんか……自分の命が惜しくねえって感じする。
もし姉妹校の方でオマエが勝手な行動して死のうとしてるとかだったら迷惑だしな……俺じゃなくて、呪術師がまたひとり減ってみんなに迷惑掛かるって意味の迷惑って事だけどさ?」