第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
ダメ押しでおまけをつけてみるべきか。
腕を組んでたのを解き、そっと自身の体を抱きしめるようにして。
『ぎゅってしても良いよ?』
「ぎゅう!?」
『制服の上からなら、揉んでも…』
「オマエ、ナニイッチャッテンノ!?」
行為じゃないしここまでなら大丈夫。それに悟自身だし。最大限に出せるものはここまでしかなかった。
今いるのは日陰でありながら、炎天下の下でグラウンド10周でもしたんですか?ばりに真っ赤になってる悟。これはちょっかいかけるのが面白い。
ううん、と唸って何か口をモゴモゴさせた後に彼は怒鳴る。
「もっと自分をダイジにしろっ!」
『う、ウィッス……』
真剣に言われるものだからそう返事するしかない。
なんだかんだで悪態突いたりしてくるけれどさ。やっぱり心配してくれるのは嬉しい。
『……心配、ありがと。カメラで撮ってもらう前に精一杯頑張るね!』
ただのキスじゃない、母を自身に降ろしてからの呪術の発動。こちらから掛けるのは今の私にとっては初めての事。そして今になってようやく理解した。
悟が封印されてた記憶っていうのは私との出会いだったって事。それを忘れたままにあの歩行者天国で私にとっては初めてで、悟にとっては初めてでありながら内面では13年ぶりの再会をするって事を。
悟がフンッ、と鼻で強気に笑う。
「なんだよ、その前払い制みてえの。てか何を頑張んだよ?」
『何って、ちゅう、ですけれど?カメラで撮った後には出来ないし……』
カメラで撮ったら多分フラッシュと共に元の秋へと帰ってる。だから呪物を使ってからだと、この出会いを私の血をもって彼の中に閉じ込める事が出来ない。ご褒美という名の呪術の行使は、呪物を使う前にしなくちゃいけなかった。
記憶がすぐに蓋がされるのか、じっくりと蓋をしていくのかまだ使ってない私には分からないのだけれど。
赤くなってた悟は眉を寄せ、は?と不思議がってる。
「そんなん、撮った後にすりゃ、良いだろ……」
『(あっ、拒絶しないって事はキスはお手伝いのご褒美として決定なんだ?)』
それで良いんだ?という手持ちのカードで済んだ安心感と、分かりやすい表情にちょっと表情が綻ぶ。そんな私を見て彼はチッ!と舌打ちをした。
「……何ニヤニヤして見てんだよ。
何かを成し遂げたらの報酬だろ?やる前にするのはさあ~……」