第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
「たったそれだけ?」
『うん、それだけ。個人じゃ出来ないから頼むしかないワケ。協力してくれるよね?』
はあー…、とため息をつく悟。指先でラウンド型のサングラスのフレームをちょっと上げて、「で、」と続けた。
「見返りがあるんだろ?ゴホービってさっき言ってたけど」
『飴ちゃん?』
「二度も同じモンはいらねえよ、確かに美味かったけど。別に俺、甘いのが好きってワケじゃねえし」
えっ、意外だ。コーヒー紅茶に砂糖ドボドボ入れてソレを飲みながらあまーいスイーツを食べる男に進化するのに。進化前…ピカチュウ前のピチュー状態の現在の悟は甘いの好きじゃないんだ…?飴あげた時に速攻食べてたから将来も変わらない、昔から甘党なんだと思ってたのに。
私が悟をじーっと見るもんだから「なんだよ、じろじろ見んな!」と怒られた。なつき度の低い悟がこれまた新鮮かも……。結構野性味があるというか。
飴以外に持ってるものが無い。
物理的なものはあげられないのだから見えないご褒美…サービスを考える。悟といえば。めっちゃ頭を撫でる事が多い、疲れた時も駄々をこねる時も、普通にしてる時も……えっちの時だって。ならきっと、撫でてあげる事がご褒美なんだって私は自信を持ち、ふすん!と笑って提案をしてみた。
『……頭、いいこいいこってしてあげるのは?』
「そんなん褒美かぁ?」
なめてんの?くらいにチンピラモードの表情の悟。
充分にご褒美だと思うけれど。大人のあんたはすっごい喜んでるじゃんか!悟(28)もいつも嬉しそうだし、私もある程度までの撫でられる行為は嬉しい。ムツゴロウラッシュを食らうとうざったいけれど。
飴もなでなでも駄目とか。他ねえぞ……?腕を組み、ちょっとだけ口を尖らせつつも考える。隣でふすっ、と笑ってる声したけれど気にしない。これなんもねえのに褒美とか言ってんのかよ、くらいに馬鹿にしてるよねー…多分。
じゃあ。じゃあ、さ…。もうひとつも最終的にするものはご褒美としてどうなんだろう?恐る恐る、彼を見上げてそれを提案してみる。
『………キス、してあげるのは?』
「は、はああ~~っ!!?」
物凄く驚く悟。座ったままに少し仰け反ってる。リアクションが半端ない、芸人クラスなんだけれど…?
悟の事だし、思春期とはいえこの当時に何人か女性経験ある可能性もある……どうせこれも駄目な場合もあるな…。