第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
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この状態に至るまでいい感じに進められたんじゃないのかな。そんな個人の任務。熱中症で倒れた件は失敗だったけれどそれは自分でなんとか出来たし…。
確かに現地の協力者、だわ。呪物も見付けてくれたし、高専時代の悟にもピンチの時に助けられた。年齢なんて関係なく何度も彼に助けられる事が多いな、私は…。悟のピンチの時に助けたくとも彼はピンチに陥る事がないから私だけ一方的に助けられてるんだけれど。
目の前のやんちゃな彼と大人になった彼を重ねてにこにこと笑って見ていれば眉を潜め、小さく「なんだよ……」と視線を反らす。なんだ、照れ屋だったりするのかな?それともまだおっぱいガン見事件を引きずってんのかな?うずうずとからかいたい気持ちを抑えながら口を開く彼の言葉を待つ。
「協力って何を?聞いてから判断するけど?」
首の後を擦りながら内容を確認しようとしてる悟。特に変な内容の任務でも無いだろうし……詳細は省いて説明すれば良いや。
涼しい風を感じながら、自身の髪を梳く。室内で張り付いてた髪は少し乾いてきてるけれどベタつくのがちょっと気持ちが悪かった。
『ん、とね。呪物のこのカメラで私を撮って貰うだけ』
「あ?それだけ?」
視線を私に向け目を見開いて拍子抜けしてる。きっと呪いを祓うだとか戦闘面だとか、もっと手順の多いなにかだとか。難しく考えてたのかも。けれども私が手伝って欲しいのはとても簡単な事。呪物(私の帰る日時を設定した、ポラロイドカメラ)で私を写すという事。たったのこれだけ。
しっかりと合った視線にうん、と頷き私はカメラ本体に視線を落とす。
『そう。重たいからこれで自撮りも出来ないしね~…ましてや非術師に頼めないし。呪術師…いや、悟が現場に居て良かったっていうか』
非術師だったらカメラを悪用するかもしれない。悪用だけじゃなく、片道切符の転送装置のようなもの……最悪、オカルト的体験をして二度とこの場所に帰れないパターンだってある。
けれど非術師とは違い呪術師なら呪物と知っていれば何かしら対策する。提出なり保存なり…破壊なり。
"ただ、私ハルカを写真に収める"……ただこれだけの協力に拍子抜けしたのか、悟はサングラスが鼻の頭でずり落ち、見開いた青い瞳がこちらを凝視してる。