第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
大人の悟であれば寛いでる際に胸に顔を埋めたりするけれど、若かりし目の前の悟はその寸前で目の前に意識を向けず、背後のウエストポーチを狙ってた。私に言われて背後ではなく、目の前の胸(といってもインナーのタンクトップ着てるから恥ずかしいモンじゃないんだけれど)を意識して凝視し、後退って。あまりにもピュア過ぎる反応が楽しく思えてきた。
ははっ、と声を出して笑いつつ、腰に巻いてた上着の袖を解きながら。
『服は着てるじゃん、それにインナーだし。下着は見えてない』
「つってもそんなデケエ乳ですって主張してるようなモンだろっ!?制服をちゃんと着ろっ!」
それ大人のあんたに聞かせてやりたいわ。と真っ赤なピュアボーイをしらーっとした視線を送りつつ制服を着る。ちゃんと着終えても視線が一箇所に来てるのは思春期故か。
……大きさ的にさっきのグラビアアイドルくらいはあるの、かな…私の……。
「揉むなっ!」
……過剰反応、ワロタ。
さっきまで凝視してた場所を私自身で確かめていると怒り出す悟。自分の体だから別に良いじゃんけ…と思いつつも両手を胸元から下げた。
『チェリーボーイかよ……はいはい、上着着ましたよっと』
腰に巻いてた上着を着直して。それから彼の方向を見て。
呪物は手に入れたならば更にその先に進まなくちゃ。私がやるべき任務はこの悟に血を取り込ませて記憶を封じる事と呪物で帰る事。このふたつが残ってる。
出来るだけ印象良く接しよう、尖ってる彼の機嫌を損ねないように精一杯気を付けながら私は彼に笑いかけた。
『でさー、私の任務の為にあともうちょっとだけ協力してくれない?ご褒美あげるから!』
まずはひとつ、協力を仰がないとね。
にっ!と笑って呪物であるカメラを手に取る。褒美って言っても、物理的にあるものは飴くらいで。あとは大人の悟だったら喜ぶなでなでなんだけれど。
悟は私の協力依頼に「協力ぅ?」と首を傾げていた。