第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
途中から探してくれたのか、それともここに運んでからさっさと探したのか。六眼なら迷うことなく探せるはず。それを知っててあえて頼らなかったけれど……色々知りすぎてるのって気持ちが悪い。それは私も経験してたから。
初めて悟に出会ってすぐの事。畳み掛ける様に疲れやすいでしょ?とか母方の苗字が春日でしょ?って聞いてたから、それが怖かった。よく知らない相手に自分を知られすぎてるのは良くないもんでさ。
しゃがんだ悟は片手を伸ばし何かを拾ってる。それは畳まれた制服。
私が横になる時に枕のように、自分の制服を脱ぎ、畳んで置いていたみたいで。
『カメラも、制服も……。ありがと』
「たまたま暑かったから脱いだ。それを敷いただけ。別にオマエの為じゃねえよ」
一度私と合わさった視線をぷい、と反らしながら彼は座ったままに上着の袖に腕を通してく。最後にきっちりボタンを締めてるところまで見届けて。
ミンミンゼミの他に、面白い鳴き方をするツクツクボウシが鳴いてる。ああ、夏だなあ、夏に戻ってる。十何年か昔の夏を体験してる。この頃の私っていくつだっけ。悟が高専一年なら15歳として……うわ、小学生だ。高学年の!
木陰でふたり並んで座って、ただ静かに蝉の鳴き声を聞いていた。確かに任務を終わらせてすぐには動きたくないわ、コレ。風が吹いてじっと座って…気持ち良くて。昔の悟であってもそばにいるのは落ち着けて。この沈黙も私は好きだった、大人の悟にはあまり静かな瞬間って無いんだけれど。
『……まあ、呪物も無事見つけたし私のミッションはいくつか済んだんだけれどさ』
「あ?まだオマエ任務続くの?こんなクソあちい中ご苦労なこった!」
そろそろ迎え呼ぼー、と呟く悟。
ポケットからガラケーを出しぱちん、と開いたのでずい、と覗き込む。森の中は圏外だったけれど建物の敷地内はギリアンテナが立ってる表示が見えた。
私の視線に気が付いた悟は携帯を隠すようにしてのけぞる。画面を見られたくなかったらしく…。