第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
『ほら何やってんの、行くよ』
手伝うならはよ手伝えや、と言いたいのを堪えていたけれどそんな気遣いも意味はなく。明らかに進む意志を感じさせない悟はめんどくさそうな表情をしてる。
「は?俺はここに居る。暑いしめんどくせえしひとりで行ってこいよ。どうせ俺の任務じゃねえし。ラスボスはどうせ倒してんだし。手伝うっても"ドアを開ける"手伝いはしたしな」
うわー、もう機嫌が変わったのかー…。凄く面倒くさそうな表情で壁にくっついてるみたいでてこでも動かないみたいで。飴程度じゃどうにもならないかな、これは。
『ん、分かった。近くに居るだけでも良いよ。私ひとりで探して来るから』
正直どっかに行かれるよりはここに居るって分かれば呪物であるカメラを使用出来る。多分、自撮りとかじゃ駄目、ていうか重たそうで片手で使うとか出来ないしろもの。
なんかご機嫌ななめな表情の悟を見て、私は上から探す事にした。だって悟の事だ、暴れて床とかに穴開けてる可能性がある。そしたら下に落ちる。正面階段から上がって上の階から探していけば効率が良いだろうし。
呪物を探すのだから帳は要らない。照明は無くとも窓から差し込む明かりがあるし視界は良好。早く探して来よう、と階段近くまで進む私の背に悟から声が掛けられた。
「……ちんたら探してんなよ」
『分かりやすいものだからあればすぐに見付かるし。なるべくは急ぐね。だから先に帰らないでよ?』
「ん、帰らないで欲しけりゃ早くするんだなー」
呪力を纏う呪物だから分かる。ただ直前に術式を使ったであろう痕跡が残っているから私にははっきりとは分からない。本当ならば私よりももっと正確に呪力や術式まで見えちゃう悟に協力して貰った方が早く終わるだろうけれどご機嫌ななめの悟に頼んでも断られる可能性があるし。やなこったー、とか楽する事ばっか考えてんじゃねえよ、とか。うわ、想像の中だけど実際に言いそうだな……。
コツ、コツ、と靴を鳴らして階段を登る。下の階のエントランスが良く見える通路。悟が腕を組んで寄りかかったまま見上げてる、ちゃんと待っててくれているんだ…。
二階の通路、手すりに手をかければ埃っぽくて。手でぱんぱん、と払ってまずはこの部屋から、と奥の部屋のドアを開けた。