第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
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散乱した物を退かしつつ、あの悟が持っていたポラロイドカメラの姿や呪力を探す。大きな屋敷で部屋数も多いけれど探すものはカメラなんだし場所は限られるはず。物が物なんだからお風呂場とかキッチンにはないだろうし、個室とかにあるとは思うんだけれど……。
ガタガタと物を退かして物色を続けてた。家主が居なくて良かった、いや私泥棒じゃなんだけどさ?
『なぁーい……』
締め切った部屋。探し始めて二部屋くらいまでは耐えられたけれど、腕まくりだけじゃ辛いものがある。額に掛かる前髪が汗で張り付いてるし。二階だから余計に熱が籠もってる。だから三部屋目からは探す前に開けられる窓なら開けて、探し終わったら窓を締める。それを繰り返してた。
夏だもん、いくら森の中っていっても都心部周辺だしね。暑いもんは暑い……すっごい蒸されてる。
あー…なるほど、これはもしかして悟は暑いから森で涼みにふらついてたって可能性大だな。
ふー、と息を吐きながら手の甲で額の汗を拭う。飲み物とか無いし、さっさと見付けなきゃ。最悪、倒れるような症状でも出ればそれこそ"負"の状態である。それを治癒すればまた症状を覚えつつ健康体になるんだけれど……。
ドアを出る前に、通路側から壁抜けしてきた呪いが出てきた。
"うけ、うけけけけっ"
にゅるんっ、と出てきたな。構ってちゃんか…。こっちは出来るだけ時間を掛けたくないっていうのに祓うまでの面倒までしたくない。
『……邪魔』
パシン、と手の甲で殴りその殴った場所から燃える呪い。ぎゃああ、と叫ぶ声は塵とともに消えていく。
ドアを開けて通路に出て。変わらず外の風に吹かれつつ壁に寄り掛かる姿を確認して隣の部屋に入ろうとしたら、奥の方の部屋から壁抜けしてきた呪いが出てくる。
ここの悟が任務として呪霊は祓ったっていっても下級の呪い全ては祓ってないみたいで。というか私がここに居る事で周辺のを引き寄せてしまったのかもしれないけどさあ……。
一直線に私へと近付くからそのまま叩いて祓い、何事もなかった…と、隣の部屋にやっと入った。