第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
どれだけ人に触れられなかったんだろう、この人は。野良犬・野良猫みたいなビビったような反応をして。
玄関に立ったままの私達に少し微妙な空気と、夏の生ぬるい風が室内に向けて吹き込んだ。窓とかしまってるし室内はちょっと暑いかもしれない。それでも森の中って事もあって締めっきりの割に涼しめな方だとは思うけれど。
「はあ?……友人、とか。やるかフツー」
訝しがる表情だコレ。
『えっ悟友達居ないの?カワイソウ…』
「トモダチくらいは居るっての!そういうベタベタするようなふかーい関係はねえって言いたいの!」
ちょっとぷりぷり怒る悟の反応が面白い。いつもと立場が反転してる。今の悟が年下だからっていうよりも色んな経験をしてないからこそ、ちょっかい出すのが楽しいっていうか。私が振り回されていた分今の悟を振り回しているっていうか。
ああ、でも。あまりいじめるのもご機嫌が元に戻らなくなるだろうからほどほどにするけれど。
深い関係の友人が居ないって事は、一年の段階では傑とは親友ってほどの関係じゃなかったのかしら。まだ入学して……今が7月とか8月と仮定したら3、4ヶ月だし親友まではそうはいかない、か。
『じゃあ、今いる友達を大事にしなよ。その友達が悩んでるなら相談に乗って、ピンチなら助けてやってさ。こればっかりは非術師も呪術師も関係ないでしょ?』
「……余計なお世話だよ」
視線を反らしてはあー、とため息をついて。
むすっとしてるなぁ……。秋の空や山の天気ばりに彼の機嫌がころころ変わる。いつ悟の心変わりが来て手伝うのやっぱ辞めた!ってなるのか分からない。早く中に入って探さないと。そして、あのポラロイドカメラが悟の暴れまわった犠牲(さっき言ってた任務の被害)になっていませんように。
悟の横を通り建物内へと歩き始める。売地といっても中は埃っぽいし、普通に靴のままで上がればブーツの音が室内に響く。コツ、コツ…と音がひとつだったので振り返ると、腕を組んで壁に寄り掛かる悟。