第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
『ん、五体満足、まだ人の形してるから大丈夫。ゴミも拾ったし。てか、飴貰ったなら手伝う!飴イズきび団子、もう食ってんだから悟は私の方で買収済みだかんね!
建物はもうちょっと戻った所のはずだからすぐに行くよ』
私が彼の横を通り、数歩進んでさくさく音が続かない事に気が付いて振り向く。眉間に皺を寄せ嫌そうな顔の悟。ポケットの両手突っ込んで一年にして貫禄あるエセチンピラですねえ。
その腕を掴んで私は引っ張った。ちょっとよろけて「おいっ!」なんて言ってるけれど。
『ほらほらちゃんと歩く』
「おい、引っ張んなって!自分で歩けるし!てか、手!何掴んでんだよ!」
歩きながら振り向き、自分の掴んでる部分を見る。手といっても繋いでるんじゃなくて腕。制服越しに掴んで引っ張ってるだけ。
そこから見上げて悟の顔を見れば慌ててるような、それでいて不機嫌さが滲み出てる表情。ふっ、と笑った。
『ちゃんと歩いてくれないから引っ張ってんだよ。手っていっても恋人繋ぎじゃないでしょ、もしかして悪ぶってるけどピュア?』
「はあ!?自分で歩けば良いんだろっ!自分で歩けばっ!……チッ!とりあえず離せって」
ぱっ、と離した腕。
悟はふう、と一息をついた。顔を上げニヤリと私に笑いかけるからなにがあるんだ?とちょっと笑みを受かべて彼の様子を伺っていると……。
「手伝うワケがねえだろ、バァーカ!」
『……はあぁ~!?』
あろうことか彼は楽しそうに「うはははは!」と笑いながら私を森に置き去りにして先へと走り出してしまった。協力者なしじゃ任務が進まなくなる!凄い速さで走り去る豆粒みたいな背中を見て私もその彼の背を追わずには居られない。
逃しちゃ駄目だ…!
私は必死に悟の背を追った。