第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
無いものは仕方ないけれど、体が万全じゃないから気を付けないといけないよね。睡眠不足は万病の元、たまにの睡眠不足が今日に当たってしまっただけ。
……出来るだけ涼しく過ごそう。
呪いを時々祓いつつもしばらく進むと、前方に人影が見えた。それはひとつだけ。呪いじゃなくて人間だ、はっきりと分かる。しかも見たことのある頭髪、黒尽くめの服。
なんだ、あっちに居るのは悟じゃん。心配して来たのかな、それとも協力者についての情報とか持ってきたのかな。なんて思ってひらひらと仕方なく手を振る。不安ではあるけれど任務は任務。ここまで着いてくる過保護さはちょっと余計かもしれない、だなんて。
ゆっくりと歩いてる悟は私の方を見て立ち止まり、軽く手を上げてすぐ下ろす。そして額に手を当ててこっちを覗き込んでる。木漏れ日が眩しいのかな?アイマスクすれば良いのに。さっきまでアイマスクしててグラサンに替えるとかこの夏の気分満喫しすぎでしょ。
そのまま私が歩いて近付けば悟は途中で止まって、私だけが進んでいる状態になった。ズボンのポケットに両手を突っ込んでる。彼らしい、歩くのだるいとか言いそうで。
『……ん?』
かなり近付いた、およそ5メートル程でやっと異変に私は気が付いた。
悟なんだけれど私の知ってる五条悟という男じゃない。これは昔の"画像で見た悟"だ。気が付いた瞬間に足は止まる。私の止まった足の代わりに近付くのは少し柄の悪い悟。チンピラかな…。
「何、オマエ…?呪霊…ってワケじゃないよな?」
じろじろとラウンド型のサングラスを少し下げ、サングラスの上部から青い瞳を覗かせてこちらの様子を見てる。対面してみれば髪も少し短めで表情がいかにも"やんちゃ坊主です、生意気注意"と言わんばかりの悪そうな笑みを浮かべてる。
じっと私を間近で覗くもんだから、失礼なやつだな…と思いながらも敵じゃないと両手を顔程まで上げ、半歩下がった。苦笑いを浮かべつつ。
『呪霊なワケないじゃん』
「ふーん?オマエ、何その呪力。細く鞭打ってンのなに?」
そして理解した。悟の言ってた協力者って悟自身。後で合流するって昔の悟がって事。
色々と詳しく、そして言葉を濁してたのは本人だから。そして……