第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
片手をカメラから離し、指を人差し指だけ立てる悟。
「オマエの恐らくは協力してくれるだろう術師はちょっと尖ってて気が難しいからね。でもハルカならなんとか出来るよ。だから任務その一。協力して貰う人物とよく話をすること。
ちゃんと仲良くして、悩み事がありそうなら相談して、つまらなさそうなら笑わしてあげてね。信用が出来ればきっと全てが上手くいくし……、」
にっこり笑ったまま言葉を止める悟。
『上手くいくし?』
「……うん。それでね、呪物を使う前に最後の仕上げをして欲しいの。呪物を使う事と同じくこれは重要な事。だからこそキミが抜擢されてるってワケなんだけど…」
私が『仕上げ…?』と言葉を漏らすと、悟は中指も追加して二本指を立ててる。
「任務その二。キミのお母さんを身体に降ろして"春日の血族と直に会ってなかった"って忘れさせる事。これは必要な事、浮気じゃないからノーカンにします、ちょっとやり方が悔しいけど仕方ないもんね……」
なんで浮気…あ、キスするからか。
悟はそれをしてこいって私に言ってる。不安。不安でたまらない。ガキンチョ、と言ったけれど変な子供だったらどうしよう。
不安であると表情に出てたのか悟はククッ、と笑った。
「心配しないで。携帯は圏外だけれど僕の言ったことを守れば良いだけ。その術師がどれだけわがままを言おうとも会ってなかったって忘れればハルカについてを無かった事に出来て丸く収まる。任務が上手くいくんだよ」
『……でも、』
……なんか、不安だ。キスをするのに変な感情を持ってしまいそう、子供だからってノーカンだからって罪悪感がある。
悟は笑って私にカメラを向けた。
「まっ!とっても簡単な任務だからとにかく行ってきな!
はーい!お写真撮りますよー!にーたすさんは何条ー?はい、五条ー!」
癖の強い言い方よお…。何言ってんだ?と突っ込む前にまばゆいフラッシュが焚かれて思わず目を瞑る。
目を再び開けたならば目の前には悟は居ない。今まで居たのは静かだった森の中、杉の葉を踏む音しか聞こえなかった静寂の森。
それが不思議な事にあちこちで蝉がミーンミンミン…と鳴いていた。