第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
「そろそろかなー」
人の影は見えないのに悟はそう言う。いや、私に見えないだけで木の幹の裏とかに隠れてるとかかもしれないけれど。呪術って良く分からない現象をもたらすし。
悟の言葉から1分と経過する事なく、ひとつ変わったものが見えてきた。獣道に沿った場所、高さ50センチほどの小さな祠が道の脇にある。土台は石…御影石とか多分そういったもの。でも上に置かれた祠の部分は木材で出来ていてかなり朽ちてる。管理する人も居ないんだと思う。苔やらオレンジ色の細かいキノコの類いも生えてるし……。
その前に悟が立ち止まると、よいしょ、と声を出してしゃがみ、小さな扉に手を掛ける。ぎち、と壊れかけの音がした。
「ファミファミファミーマファミファミマ~いらっしゃいませ~」
『コンビニ感覚で気軽に手を突っ込んでんじゃないよ…』
祠の中に手を突っ込む悟。その手が引き抜かれるとガサ、と音を立てた袋。ぼろぼろな白い袋はかなり時間の立ったビニール袋で今じゃロゴがすっかり変わってるコンビニの袋だった。
『危ない薬の取引みたいだね…』
「オネエサン、オネエサン!気持ち良くなるクスリ、5グラム8000円ヨ!安い、安い、ジッサイ安い!」
『止めろや』
ふざけながら悟はしっかりと縛られた袋を解く。解く前に風化も進んでいてあちこち穴が開いてるから、ちょっと結び目に苦戦のち、「えいっ!」と適当な位置から破いた。そうやってすーぐゴリラパワーを出す。ついこないだも部屋でポテチの袋に苦戦して「えいっ!」って撒き散らしてた。それがのりしおだったから酷いのなんのって。
彼のゴリラパワーで破られた袋から現れたのは時代を感じるカメラ。インスタントじゃない、ポラロイドカメラ。とてもレトロで今でも人気がありそうだけれど……
まあ、うん。レトロといえば聞こえが良いけどかなり古いものであちこち汚れが目立つ。
『それが呪物?確かに呪力を感じるけどさ……使えんの?割と野晒し気味だったけれど、』
袋に入ってたとはいえ穴とか空いてたし。鉄のパーツの部分が錆びてて、ボディに錆が結露とかで下に垂れた跡とかあるし。
写真撮ったりするなら、フィルムとか湿気で経年劣化もありそうだ。呪物だから平気!って言われたらそれまでだけれど。