第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
187.
停車してエンジンを切った車内から出て、周りの景色を見る。
まるで先日のキャンプを思い出す様な、木々の茂る場所。人の気配のしない場所に着いた。呪いや呪物があるならばぴったりかもしれないけれど……。
ここに来るまでの道はボロボロのアスファルトと砕石の道を時々交互に走って、到着したのはボロボロで売地と書かれた看板の掛かった、塗装があちこち剥がれ錆だらけの鉄の門の前。森の中にあるこの大きな一軒家のある光景は"なにかがある"って気配を感じる。
しかしまあ……こんな不便そうな場所に建物を買ったとして生活どうすんの?って感じだけれど。売地って看板すらも人の目に着かないでしょ…不動産でようやく知るようになるのかな?
門の先には屋敷があり、その手前の敷地内には秋らしくススキがあちこちに生えていて、錆だらけの門や建物自体にツル科の植物がびっちり巻き付いてる。季節上、枯れつつあるけれど……。
この様子を見るに数年なんて言えない、二桁は誰も住んでいない場所なんだろうなって予想が出来た。
『……あのさあ、現地の協力者?ここにいんの?』
現地の呪術師って言ってたけれど、車は悟が運転してきたものだけ。バイクだとかも無い。建物は誰かが出入りした形跡もないし、人も見かけない。
覗き込むように悟を見上げるとサングラスを外して、首元に待機してたアイマスクを着け直してる。
「ん?うん、居る居るー、ちょっと合流するまでに過程があるんだけれど」
適当に誤魔化してるようでもその人物を悟は良く知ってるみたいで。もしかしたら車で送って貰って後で迎えに来て貰うだとかそういうのかもしれない。
……過程っていうのがちょっと気になるんだけど。
『はあ…?先に行ってるって事…なのかな?
それにしても私一人で行動するな、といつも言ってる割に今回私が途中までひとりなんだね。てっきり悟が一緒に行く(着いてくる)と思ったのに』
心配性な所もあるし、しがみつきながら僕も行く!ってごねるかと思えばやけにスッキリしてる様子だし。だからこそ余計に怪しい。
車のそばからゆっくりと離れ、売地の隣の森…杉林を指差して歩き始める悟。
「んー、なぁに?僕が一緒じゃないのは寂しい?」
『そうだけど~……そういうんじゃあないんだよなぁー…』
「いや、それどっちよ?」