第21章 僕の初恋をキミに教えてあげる
『んっ……、む、さとっ……!』
もう鉄の味のしないキス。唇が離れた後にもう一度ぎゅっと抱え込むように抱きしめられて。
犬みたいに彼にもしっぽがあったら、今の悟ものすごくしっぽをぶんぶん振ってるんだろうなあ。背にまわした手で撫でて肺いっぱいに彼の香りを満たして。
『いつもより帰って早々に甘えん坊将軍だけどどうしたの?』
ふふ、と笑う声が目の前で響いて聴こえて、心地よくて。
「んー…?甘えん坊将軍、ずっとハルカとこうしたくってたまらなかったの。ベッドに行けば暴れん坊将軍になるんだけれどね……?今夜はきっと激しいよ?
まあオマエが僕に跨って馬に乗るみたいにパカパカならぬパコパコ、」
『こいてるね~、えっちは無しの方向かな?』
「すいません、調子乗りました」
抱きしめあった体を名残惜しいけれどゆっくりと離し、する…、とアイマスクを首まで下げれば立てた髪がサラ…と落ち、慈しむように少し細められた瞳。見つめ合うように、私の両腕をしっかりと掴んでじっと目を見てくる悟。
「京都にハルカが二週間行くその前にこっちでね、オマエひとりでやって欲しい任務があんの。途中までは僕も同行するけれど任務の遂行はオマエが中心。そこからはハルカひとりに行ってもらうよ」
──オマエひとりでやって欲しい。
過保護な悟の口からそんな言葉が出るだなんて。掴まれた二の腕、片腕を上げて悟の額へと手を伸ばしかけるとその私の行動を理解されて、「熱はないよ?」と否定された。熱でおかしくなったワケじゃないんだ……。
「現地の術師にちょっと協力してもらって呪物を使うっていう内容的には割と簡単なものだよ。多分呪霊と戦う事はないかな。
この案件についてはハルカにしか頼めない任務でね。ちょっぴり冒険とコミュニケーション能力が試される任務……キミに遂行出来るかな?」
悟に私にしか頼めないと言われたからにはやらないとって思った。
ふふん、と自信を持ってその青を見つめ返す。
『先生がそういうのなら期待に応えないとじゃん?やってみるよ、その任務』